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□プライベート・イズム
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「――――はぁ?
シュラの困った顔が見たい?」
「そうだよ。
音夢なら出来るだろ?」
「困った顔ねぇ…」
トントンっと書類を机の上で纏めて角を揃える。
私の前には珍しいデスマスクと紫龍君のコンビだ。
デスマスクならいざ知らず、紫龍君まで…
「何でもいいんだよ。
シュラの困った顔とか慌てた顔とか。」
「見てどうするの?」
「ただの好奇心だ。」
「いえ、シュラはいつも冷静であまり感情を表に出さないので、それが強さの一要因なのかと…」
「シュラってああ見えて分かりやすいわよ?」
「でも困った顔なんてしないだろ。」
「種類にもよると思うけど…
よく見るのはデスマスクの悪乗りについていけない時とか。」
「うぐっ、」
「呆れたように困った顔をするわね。
困るって言っても一概に言えないし。」
地味にダメージを受けたデスマスクが紫龍君に抱え起こされる。
打たれ弱いなぁ。
「困り顔にバリエーションがあるのですか?」
「紫龍君もあるでしょう?
例えば春麗ちゃんが料理を作ってくれたけど、塩と砂糖を間違ってたら困るでしょう?」
「確かに言うか言わないか、言うにしても何と言うか迷って困りますね。」
「それとは別に道が工事中で通れなかったりしても困るけど、春麗ちゃんの時とは違う困った顔をするでしょう?」
「ああ、そういうことですか。
確かにバリエーションがありますね。」
「音夢、この際何でも良い。」
復活したデスマスクがゾンビのように私の両肩に手を置き凄む。
まるでデスマスク自身が亡者のようだ。
「シュラを慌ておののかせられるのは音夢だけだ。
勇者になれ!」
「そんな勇者にはなりたくないなぁ…」
なんて呟いていると入口にシュラが立っていた。
不機嫌な顔でこちらを一瞥するとデスマスクの手を掃った。