short

□そんなあのコにご用心!
1ページ/3ページ





「音夢〜、暑い。」

「夏だもの。
涼みたいなら海に行けば?
シジフォスもそれくらい許可してくれるわよ。」



読みかけの本を閉じ、擦り寄ってくるレグルスの頭を撫でる。

暑いのなら近付かなければ良いのにと思いながらついつい甘やかしてしまう。



「海か…明日辺り聞いてみたらどうだ?」

「俺が言って許可くれるかなぁ?
ねぇ、デジェルが言ってよ。」

「私は特に暑いとは思わない。」

「そりゃデジェルは自分で氷を作れるしな。
わざわざ遠出せずとも事足りるだろう。」



私と同じように椅子に座って読書をしていたデジェルと床に転がっていたカルディアが声を上げる。

夕涼みをしようと皆デジェルのいる宝瓶宮へやって来たのだ。

カルディアなんかは床が一番冷たくて気持ち良いと石のタイルとハグしている。



「っていうか今暑い。
デジェル氷。
もっと氷ちょうだい〜。」

「さすがにそろそろ腹を下すか凍傷になってしまうぞ。」

「でも暑いんだもーん。
このままじゃ寝れないよ。」

「あ、涼しくなりたいのよね?」

「音夢は何か良いアイディアでもあるの?」

「納涼肝試ししましょうか?」



ニコリ、良い笑顔で言った。





「――――で、何でウチなんだ?」

「だって巨蟹宮が一番おっかないんだもん。」

「壁に死人の顔が浮き上がらない?
ここは冥界に一番近い場所だもの。」



そう言うと心底嫌そうな顔でマニゴルドが帰れとうなだれる。

それにお構いなしにレグルスとカルディアが宮の奥へと入っていった。



「あっコラ!
何してんだテメェら!」

「良いじゃん。
お礼にデジェルが氷くれるよ。」

「デジェル……オマエ止めろよ。」

「そうは言われても、音夢が怪談をしたいと言ったので…」



断りきれなかったと言えばマニゴルドも呆れたように溜め息を吐いた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ