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□ねだって
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「サガ、サガ、」



少し慌てたような声色で彼女が私の名前を呼ぶ。

もう寝るだけの時間にこの慌て様……何かあったに違いない。



「どうしたのだ音夢?
虫でも出たのか?」

「違うよ!
そうじゃなくてサガにお願いがあるの。」



きゅっと小さな握りこぶしが胸の前で作られる。

意思の強そうな表情に重大な事かもしれないと続きを促す。



「私で叶えられる事ならば。」

「サガにしか頼めないの。」

「何だろうか?」

「サガに触りたい!」

「………………ん?」

「だからサガに触りたいの。」

「…………





え?」

「だからねっ、」

「いや、言葉を聞きたいのではなくだな。
理由だ。
そこに到るまでの思考順路と動機が知りたい。」



一瞬で顔が真っ赤になって俯く。

いやいやいや、順番が逆だろう。

普通触りたいと言う前に顔を赤らめるだろう?



「い、言わないと…ダメ?」

「まぁ…触られるのは私だし。」

「うー……恋人に触れたいと思うのは理由がいる事なの?」

「いつもなら音夢はそんな事を言わないので気になったのだが…」



もじもじと腕を後ろで組んでみたり、足で床にグルグル円を描く。

本当にどうしたと言うんだ。




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