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□突き抜けろ女の子
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―――女聖闘士は素顔を見られた者を殺すか、愛するか―――

それは神話の時代から受け継がれてきた掟。





「待てぇぇえ!!
音夢――!!!」

「待てと言われて待つ者などいるものか!
ふはははは!
貴様らなんぞがいくら必死になったところでこの私に追い付けるものかっ。」



ひらひらと腰に巻いた布と少しくせっ毛の髪が靡く。

ゴツゴツとした岩場を難とも無しにぴょんぴょん跳びはねる。

岩場から上の岩場へ。

追って来る者は岩に行く手を阻まれて足止めをくらっている。



「クッソ!!
オイ!調子にのんなよ!」

「ウワーハッハッ!!
無駄無駄ァ!
こっこまでおいでー。」

「にゃろう!!」



悔しそうな声が遠く離れた場所でしている。

私がたかだか白銀なんぞに捕まるものですか。

しかも青銅にやられたような白銀に。



「そんなんじゃ聖衣が泣いてるぞー。」

「うるせぇ!
聖衣もないくせに!」

「ないんじゃないですー。
私のは修理中なんですー。」



あっかんべーと仮面で見えないだろうが倒れている者に向かって言う。

私の聖衣は今、牡羊座のムウ様に頼んで修理中なだけよ。


それにしてもあちらは聖衣を着ていると言うのに、何と言うていたらく。

そんなんじゃいつまで経ってもセブンセンシズになんて目覚められないぞ!



「ふーん。
それじゃあ音夢の素顔を見るなら今が絶好調のチャンスなんだな?」

「へ?」



いつの間にか現れた背後の気配の主を確かめようと振り返る。

蟹座のデスマスク様と双子座のカノン様だ。

ちょ、これはヤバいかも……



「見せろよ、顔。」

「やーですよ。
黄金聖闘士様ともあろう者が、興味本位で仮面をとろうだなんて。
悪趣味ですよ!」

「良いじゃねぇか。
俺様がたーっぷり愛してやるぜ?」

「それとも俺でも良いがな。」



ニヤニヤと2人の黄金が近付く。

ぜ…、全力で逃げたとして私が逃げ切れるのか?

答えは否だ。

さすがの私も未だ光速の壁は破れていない。




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