side story 3

□僕の産まれた日
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「愛華さん、映画楽しかったね!」

「うん。
次は来年公開だってね。」

「ねぇ愛華さん、また僕と行ってくれますか?」

「勿論。
あ、のど渇かない?
近くによく行くお店があるの。
瞬君さえよければ行かない?」

「うんっ。
愛華さんがよく行くのってどんなぁお店かな?
僕ちょっとワクワクしてきた。」

「ふふっ、楽しみにしても良いと思うよ。
良いお店だから。」



にんまりと子供のように笑って愛華さんが歩き出す。

慣れた様子で大通りから細い路地へ入り込んでいく。

暫く進むと、そこだけまるでファンタジーの世界から出てきたんじゃないかと思うようなお店があった。

お店の軒先から地面、天井に至るまで緑で溢れている。

まるで森の中の隠れ家だ。



「うわぁ…
すっごーい……」

「なかなかない外見でしょう?
入ろう。」

「え、でもここ…」

「お花屋さんじゃなくてハーブティーのお店。
ハーブ自体の取り扱いもあるけどね。」

「ハーブティー?
僕あんまり詳しくないんだけど…」

「私もだよ。
ここのマスターは良い人だから。
詳しくなくても甘いの、とかスッキリするの、ってアバウトに言っても大丈夫。」

「そうなんですか?
それなら僕でも安心かな?」

「そうそう。
ジュネちゃんだっけ?
気に入ったならデートにでも使ってあげてね。」

「えぇ、こんなに素敵なお店なんだもの。
きっとジュネさんも気に入ってくれると思うな。」

「中はもっと緑だらけだよ。
マスター、お久しぶりです。」



緑のアーチを潜るとお爺さんと言うにはまだ少し早い、でもそこそこ歳の男の人が顔を出した。

愛華さんの顔を見ると嬉しそうに皺をさらに深く刻んで笑う。



「いらっしゃい。
久し振りだね。
そっちの…ぼっちゃんは初めましてだね。
ゆっくりしていってね。」

「あ、ありがとうございます。」



マスターは僕を見ると小さく手を振り、愛華さんと短い会話を2、3してカウンターから出てきた。

僕は愛華さんに連れられ店の奥へ進む。

足元にところ狭しと並べられている鉢植えは全て違うハーブのようだった。

マスターはそれらを確認するように少しずつ葉っぱを千切っている。




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