side story1

□星のふる夜
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クスクスと笑う愛華は妖艶でやはり別人のようだ。



「私はアテナと同じよ。
あの娘の姉のようなものね。
あの娘はいつの時代も私を護ろうとして傷付く…」

「アテナと、同じ…」



ゼウスは兄弟も子も多い。

オリンポス十二神はほぼ全員が彼の関係者だ。

そして彼女の言葉を聞いて推測する。



「貴女は……もしや…」

「まだ言ってはダメ。

私の代行者はまだソレに気付いていないのだから。
目覚めたその時はヨロシクね。」

「はっ、畏まりました。」



頭を下げようとしたが彼女が頬に触れているのだった。

強い力ではないが抗い難い。



「シオン、まだ何も知らないフリをしてあげてね。
そして目覚めた後も同じようにしてほしいの。」

「お受けいた……、わかった。
安心してくれ。」

「ありがとう。

そろそろアナタにも人として幸せになってほしいわ。」

「女神を護る事ができるのが幸せな…」

「聖闘士としてではなく人としてのアナタよ。
ソレは贅沢でも罪でもないもの。
アテナもきっとそう望んでいるわ。」

「…ありがとう。
長生きはするもんだ。」



クスリと笑って彼女の手に自分の手を重ねる。

優しく微笑んだ彼女は元の愛華の小宇宙に戻っていっている。



「あぁ、シオン。
貴方は長い時間戦い続けてきたのね。」

「……長い時だった。」

「大丈夫。
世界は愛で満ちているわ。
貴方にも私にも。」

「ありがとう…」



愛華の小宇宙が昼間の様子に戻った。

どうやら彼女はまた愛華の中へ戻ったらしい。

ゆっくり離れると愛華はおやすみなさいと笑顔で言った。

先程の事を一つも覚えていないようだ。



「あぁ。
今日は良い夢が見れそうだ。」



そう言って彼女に別れを告げ来た道を戻る。

あぁ、そうだ。

いつか彼女が目覚めたら今日の事を教えてあげよう。

この時君が世界を愛で包んでいたのだと。

確かにワシの世界に愛を運んできたのだ、と。




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