10/02の日記

21:12
小ネタ
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それは・・・木佐さんの無邪気な
言葉から始まったのだった・・・。

「丸川書店開催、第10回ミスコンテスト?」
「そうそう〜」

今まで文芸に居たときは、
そんなイベントは無かったので、少し興味が湧いた。
書類をコピーし終え、デスクに座り隣で
コーヒーを飲んでいる木佐さんに尋ねた。

「・・・なんなんです・・?それ」
「あはは〜。あのね、丸川書店では毎年、
各部門ごとに代表者を決めて出場するんだよ〜。
律っちゃん、初めてだよね〜」
「というか、よく毎年続いてますね・・。
・・・それにエメラルドは男性編集ばっかじゃ
ないですか!出場できませんよ?」

俺の疑問を待っていた!という顔で、
木佐はにっこりと笑った。
そしてなにやらパソコンをいじりながら言った。

「毎年優勝商品が豪華でさぁ〜。
みんなそれ狙ってんだよ。
他の部署は可愛い女の子が出場してくるけど、
俺らは毎年女装して出場してんだよ〜」

・・・・はっ!!?
じょ・・・女装!!?
本当に何考えてんだ!この会社は!!

「ちなみにね〜去年は羽鳥が出場したんだよ〜」
「・・・え!!!?」

口を開け、驚愕の表情を浮かべた俺に
木佐さんはいつもの愛くるしい笑顔で
ある一枚の写真を見せてきた

「これこれ〜!」

そこには、黒髪でロングヘアーで
凛々しい顔立ちの女性が写っていた。
写真で見ても美人で、思わず目を見開いた。
が・・この話の流れからいくと・・この人は・・

「・・・まさか・・・」
「そう!去年、優勝にはいたらなかったけど、
審査員特別賞を獲得した、
我らが副編集長!!羽鳥芳雪で〜っす!」
「これ、羽鳥さんなんですか!!?」
「似合ってるでしょ〜」

・・・やっぱり羽鳥さんだった・・・!!
確かに言われてみれば、化粧はしているが
羽鳥さんの顔の面影はある・・。
しかも・・・すっっっっっごい眉間に
しわがよってる・・・!!!

「・・・・羽鳥さんが哀れだ・・・。」
「あはは!何言ってんの〜律っちゃん」
「はい?」
「今年のうちのミスコン(女装)代表は・・・
律っちゃんだよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・
はいぃいいいい!!!!?」
「ちなみに満場一致だから☆」

―――――――――――
――――――――――――――

そんなこんなで丸川書店開催の
ミスコンの前日・・・・。
( 俺の名誉のため言いますが、
かなり抵抗しました!!
それなのにあの横暴上司が
“出場しなきゃ仕事10倍。
それから・・・・俺と毎晩寝ること”
とか言いやがって、嫌々出場することに・・・)

高野さんと羽鳥さんが俺の衣装を
見立ててくれたり、調節してくださって・・・
木佐さんと美濃さんがメイクを
担当してくださることになった。

「小野寺、これが当日の衣装なんだが・・・・
悪いが一度確認で着てみてくれないか?」

羽鳥さんが持ってきてくれた衣装は、
白のミニワンピ。
裾のところがふんわりしていて、
清楚系だが可愛らしい服だ。
靴は白のパンプスで、リボンがついていて、
最近流行のものだった。
ウィッグは俺の髪色に合わせて、
淡い亜麻色でまっすぐのロングヘアー。
そのワンセットを羽鳥さんから渡され、
俺はしぶしぶ着替えることに・・・

・・・・・・・・・・数分後・・・・・・・・・・・

「うっわぁあああ!!律っちゃん可愛い〜〜!!!」
「ほんと!よく似合うね〜」
「・・・サイズも問題なしだな」
「・・・・・ふ〜ん」

「は・・・ははは(棒読み)」

と、反応も様々だが、
俺の顔は死んでいたことだろう・・・・
そんな中、木佐さんと美濃さんはメイク道具を
急いで取りに行ってしまって、
高野さんも上から下まで俺を見ると、
“ま、いいんじゃねぇ?”
と言い頭を撫でてから何やら書類を取りに
行ってしまった。 

「〜!!!」

俺の顔はまた真っ赤だろう・・。
あの人はいつも突然優しくなるから・・・
心臓に悪いんだ!!
ドキドキしてるのはそのせいだ!!
と言い聞かせていると、羽鳥さんが
サイズの確認をしてきた

「サイズは大丈夫か?」
「あ、はい。ぴったりです。ありがとうございます!」
「・・・いや・・・。実はその一式を選んだのは
俺じゃない。」
「・・・えっ?」

羽鳥さんは・・・選んでないとしたら
・・・・誰が・・?

「・・・高野さんが全部選んだんだ。
“あいつに合う色は白色だ”とか、
“あいつは多分こういうタイプの服の方が
着やすいだろう”って言ってな・・・」
「・・・・高野さんが・・・?」

(これ・・全部・・・?)

これ着た時・・・すごく嬉しそうに微笑んでて・・・・それって・・・
高野さんの選んだ服を・・・俺が着たから・・?

「・・・本当にあの人はお前のことを
よくわかってるよ」
「!!」

俺の顔に熱が集まってきて・・・・いつの間にか木佐さんと美濃さんが帰ってきていて、
俺にメイクをしてくれている時も・・・羽鳥さんに言われたことが頭から離れなかった・・。

―――――――――
――――――――――――

〜ミスコン当日〜

色んな部署の方が集まっていて・・・とっても可愛い装いに
身を包んだ女子社員たちにまぎれて俺は舞台袖に居た。

「あれ?小野寺君じゃないか〜」
「あれ!長谷川さんじゃないですか。応援ですか?」
「あはは、まあね〜。今年はうちで一番若い子が出てくれてるから、
心配でね〜。」
「なるほど!」
「それにしても・・・また随分とよく似合ってるね!」
「あ・・ありがとうございます」
「あ!そうだ!ミスコン終わったら飲みに行かない?」
「あぁ!良いですn「だめだ」った・・高野さん!!?」

長谷川さんと談笑をして緊張をほぐせていたところに・・・
高野さんがいつの間にか俺の横に居て、また勝手に断っていた

「こいつ、この後も仕事させる予定だから」
「は・・はぁ!!?」
「はははは。仕事じゃあ仕方ないね、また今度、飲みに行こう。」
「あ・・はい。」
「じゃぁ小野寺君、お互いがんばろうね」

そう言って長谷川さんは自分の部署の方が居る場所へと向かっていった

「ったく。そんな格好で他の奴に愛想ふりまくな」
「は・・はぁ!?」

またいきなり意味不明なことを言い出した。
すると、俺のほうをじっと見てフッと笑った。

「よく・・似合ってるな。」
「〜っ!?」
「はっ、顔真っ赤。」
「〜かっからかわないでください!!」

もう次で俺の番の時間が来た。
ぎりぎりまで高野さんは俺のそばに居てくれて・・・いつもみたいに・・
俺をからかって・・・俺も緊張なんて忘れていて・・・・

「次、エメラルド編集部、お願いします〜!」
「あっはい!!」

椅子から立ち上がった俺の耳元に高野さんは小さな声で・・・
でも俺には確実聞こえる声で・・・

「・・・律、頑張れ。大丈夫・・・俺がいるから・・」
「!!」

――――
――――――

「続きまして〜!去年は惜しくも審査員特別賞を獲得した、
丸川きっての美形軍団、少女漫画部門エメラルド編集部より今年は新人編集者!
“小野寺律”さん!!どうぞ〜!!!」

コツン・・・
コツン・・・

「うっわ!!!まじで男!!?」
「わ〜小野寺君可愛い!!!」
「・・・あれなら男でも俺いけるわ・・」
「肌綺麗!!すっごい美人!!」
「小野寺律?誰?男の人なの!?」

など・・様々の歓声が飛び交っているが・・・正直俺はうれしくない・・・。
・・・誰だ・・いけるって言った奴・・・!
男が可愛いだの、綺麗だの言われて嬉しく思うはずがない!!
・・けど・・・
ふと客席を見ると・・・高野さんと目が合って・・・・口パクだけど・・・
          
            “可愛い”

「〜っ!!」

高野さんに言われると・・・・なんだか顔が熱くなって・・・・心臓がバクバクする。

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