The Baby-Sitters Club

□クリスティーの最高なアイデア
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ビーシッターズクラブ。私たち4人で協力して一緒につくりあげたのだけど、私は自信を持って始まりは私のアイデアだったことが言える。「私たち」というのは、マリーアン・スパイヤー、クラウディア・キーシ、ステイシー・マクギル、そして私−クリスティー・トーマスだ。
 
 私がこのアイデアを思いついたのは、7年生になったばかりの火曜日の午後だった。その日はとても暑かった。暑すぎて、エアコンが完備されていない私たちの学校、ストーニーブルック中学校では、先生方はあるだけの窓とドアを開けて電気も全て消した位だった。髪が首の後ろにくっついてきて、長いポニーテールにできるようにゴムを持っていたらなあ、と思った。蜂が教室の中に入り、私たちの頭上をブーンとうなりながら飛び回っていて、担任のレドモント先生はいったん授業を中断し、私たちに工作用紙でうちわを作るのを許してくれていた。そのうちわは、蜂を近寄らせないようにすることしかできなかったが、作る間に地理の授業を10分間つぶすことができたのは良かった。
 
 とにかく、その息の詰まるような午後はいつまでもだらだらと続き、前側の壁にかけられている時計がやっと2時42分を指すとチャイムが鳴った。私は席から跳びあがり、「よっしゃー!」って叫んだ。そこから逃げられることがとても嬉しかったのだ。学校は好きだけど、時にはもう十分なのではないかと思うこともあるのだ。
 
 レドモント先生は、ショックだったようだ。彼は多分、自分が私たちにうちわを作ることを容認してあげ、とても親切にしたのに、と考えていたのだろう。しかし、そこに全然ありがたく思わずに、一日が終わってほっとしている私がいたわけだ。
 
 悪い気はしたが、自分を抑えることができずにいた。私はいつもそうだ。何か言いたいことを思いついたら、それを口に出す。なにかしたいことを思いついたら、それを実行に移す。母さんは、これを感情にかられると呼ぶ。時々それをトラブル、と呼ぶこともある。でも、母さんはそれをトラブルと意識するだけではない。トラブルそのものだと思っているのだ。
 
 そして、この時私はトラブルを引き起こした。そのように予想できた。次に何が来るか、分かりすぎるほどトラブルを起こしてきたから。
 
 レドモント先生は咳払いをした。彼は、どうすればみんなの前で私の自尊心を傷つけずに罰を与えることが出来るか考えようとしているようだった。そういうことが、彼にとっては重要らしい。
「クリスティー。」とレドモント先生は言いかけたが、すぐに言い直して、変わりにこう言った。「みなさん、宿題は言い渡しましたね。授業は解散です。クリスティーは、少し残っていなさい。話があります。」
ほかの生徒たちが教科書やプリントをしまい、笑ったり喋ったりしながら教室を離れていく間、私はゆっくりとレドモント先生の机に向かって歩いていった。彼が何か言う前に、私は謝り始めた。たまに、これで救われるのだ。
「レドモント先生。」と私は言った。「本当にごめんなさい。特に意味があったわけではないんです。その・・・学校が終わって嬉しいという意味で言ったわけではないんです。家に帰れるからほっとしたんです。家は、エアコン完備ですから・・・」
レドモント先生は頷いた。「しかしね、クリスティー、将来の君にとってもう少し礼法をふまえた上で、行動をすることが出来るといいと思うのだが。」
礼法という言葉の意味をきちんと理解しているわけではなかったが、おそらくはレドモント先生の一日をベルが鳴ったとたんに跳び上がってよっしゃー!と叫んで損ねるようなことはしないということであろう。
「はい。分かりました、先生。」と私は答えた。時々、丁寧にすることでも救われることがあるのだ。
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