天才少女とテレパシー少年

□本当の友達
1ページ/8ページ

 ジリジリジリーピーガガガガガッ。

この壊れた電子音は…というと。
 「う〜ん。」うなりながら手を伸ばして目覚まし時計を止める。
 そう。これは僕の目覚まし時計の音。もう数か月この音だ。だから慣れてしまった。
 
 僕は富永翔。僕の家はすごい貧乏だ。弟もいるのだけど、母は一人で何個もの仕事を掛け持ちしていて家にいることはめったにない。だから、僕は自分の面倒はもちろんのこと、弟の面倒まで見ている。
 僕の父は、警察官だったのだけど、ある事件の犯人を捕まえようとしたことがきっかけで、犯人に狙われ、殺されてしまった。
 父の財産はあるのだけど、母は将来のために使いたいといい、すべて貯金してある。そのため生計はすべて母の仕事の給料で賄っている。
 だから、頑張って節約しないといけない。
 つまり、新しい目覚まし時計を買うことができないからこんな異様な音がしたのだ。
 
 このままでいいのだろうか。僕は、絶対に高校受験を一人で乗り切って、特待生でどこかの学校に進学するつもりだ。母親に余計な心配はかけたくない。弟の稜(リョウ)は11歳だ。弟には自分のような苦労をかけさせないようにがんばらなきゃ。
 今まで部活に入っていたことはない。家で家事をしなくちゃならなかったから。でももしかしたら、稜が中学生になって部活に入るようになったら僕も入れるかもしれない。 
 僕の家はボロ貸しアパートと言ったら聞き分けが悪いが、結構満足している。ホームレスよりはいいからね!
 こういう家庭に育ったからか食べ物の好き嫌いは基本的にない。もちろん稜も、だ。最近の趣味は、料理をすること。今では材料費も削減しつつおいしいものを作れるようになってきた。一番好きな料理は、揚げ出し豆腐だ。なかなかの腕前だと思うよ?
 
  
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ