短編

□毎朝の幸せ
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side CHIZURU




私は学校に通うため毎朝電車を使って通っている。

同じ時間、同じ電車に乗る。

そして私は毎日ある人を見る事が日常になりつつあった。




「いた…」




紫の綺麗な瞳。

サラサラの黒い髪。

すらりとした体型に整った顔。

いつも彼はこの電車の決まった場所にいる。

そんな彼を見る事が私の決まりになっていた。




「…」




私はいつの間にか彼を好きになっていた。

けど半年以上彼を見ているけど、いまだに彼の名前は知らない。

どういう人で、どういう声なのか、どこの人なのかも知らない。

だけど私は毎朝この人を見られるだけで満足だった。




「今日も本を読んでる…」




いつも彼は本を読んでいる。

難しそうな本だけど、私は本の題名を覚えると放課後図書室で探している。

これも日常になりつつある事だ。




「"新選組の歴史と真実"…か……図書室にあるかな?」




彼を見ながらそんな事を考える。




『次は薄桜鬼学園前〜降りる際にはお忘れ物に気をつけて…』

「あ…」




降りなきゃ…。

まだ彼を見たかったけどしょうがない。

着くと電車の扉が開き、私は降りる。

そして最後に扉が閉まる直前に最後に彼を見る。




「…また明日」




そうつぶやくと同時に扉は閉まる。




「今日も頑張ろう」




そして私の1日は今日も始まる―――。








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