暁の蒼い薔薇

□Prologue 廻りだす運命の歯車
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果てなく続く闇の空間に、一人の男は立っていた。


その漆黒に照らし出された青白い己の両手を見詰め、男は口角を僅かに上げた。



「………そろそろ、か」



男は依然として笑みを浮かべたまま両手を握り締めた。


脳裏に蘇ってくるのは、確かな記憶。


床に広がる真紅と、最後の笑顔と共に儚くも散っていったあの「約束」。



「…こんな理不尽で腐った世界なんて、俺が作り直してやる」



そして三人でまた笑って…今度こそ幸せになるんだ。


男は黒を仰ぎながら言った。自嘲的な笑いが口許から零れた。



「……………どうして……どうして俺が……ッッ!!」



男の頬を一筋の雫が伝っていった。それが黒を乱反射しながらぽたり、と滴る。


男はそれを腕で拭うと、傍に咲く一輪の蒼い薔薇に目を向けた。花弁がはらり、と地に落ちる。


残る花弁は、たったの二枚。



「―――復讐戦の、幕開けだ」








抱いたユメは、ほんのちっぽけな「幸せ」。


でも、俺には…それを抱く事さえ許されないのか……?


…どうであろうと、絶対に取り戻す。


あの幸せだった頃の日常を、風景を、笑顔を。


その先に待つものが破滅でも良い。


その為に多くの犠牲を払うことになったって構わない。


ただ、俺が願うのは―――…







「―――…これは父さんと母さんとリオンの三人だけの約束ね?」












小さな「願い」を乗せた無機質な歯車がゆっくりと廻り始めた。


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