short:)89

□はなれても
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広大の話を聞いたとき、
あたしは一瞬目の前が真っ暗になった。












いつも笑っている、強がりで意地っ張りな彼が涙を見せることなんて、めったになかったから。






野球のことなどよくわからないあたしは、
広大が怪我をしたと聞いても、
必ず治ってまた戻ってくる、すぐにまた野球をする彼が見れるとばかり思っていた。

野球をする人にとって、怪我をするというのがどんな意味をしめすのか、なんてあたしには全然分かっていなかった。


去年まで一緒にプレーをしていた狩野君も、怪我をして手術もしたけどケガが治って、
今もまた野球をやれているのだ。

その話を聞いて、

広大もすぐに戻れるよ!
早く良くなってみんなと一緒にまた野球をしよう!

なんてかるいことばをかけてよかったのか。

その言葉を、広大はどんな気持ちで聞いていたのだろう。






去年の能見先輩の怪我は、
あの年中に治って試合に出られて結果だって残せたけど・・・

金本先輩のように肘が治らなくて痛いままプレーをしている人だっている。


転んだかすり傷のように怪我はすぐに治るものだけじゃないんだ。






あたしの感じている世界と、広大の感じている世界は、全然違う。


あたしは、それを考えないで、
広大になんてことをいったんだろう。



知らないところで、どれだけ彼を傷つけただろう。





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