虎のプリンセス

□サヨナラ
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『り、りょうたさん、』




「なに緊張しとんじゃ(笑)」



『あたし、あれライトフライだと思って…』



「わしも思ったわ!!」



『お、おめでとうございます…!!』



「…そんな震えんでも〜(笑)」



『だっ、あたし、ひどいこと、っ』


「わーもう泣くなーっ」








わしは今日、甲子園でサヨナラホームランを打った。

じゃから、周りの奴らからみたら、葵は感動して泣いてるように見えるのかもしれん。





でも、そうではない。






実はさきほどまで、わしと葵は少し喧嘩しておった。


理由は、まぁ、その、わしが悪いんじゃけど。











***



『良太さん、』


「おう、なんじゃ?」


『もしかして、最近、体調くずされてます?』


「…は?」


『いや、ちょっと』


「わしは風邪なんて引いておらん!!!」


『え、ちょ、』


「さわるな!!!」


『(む!)そんな言い方しなくたって良いじゃないですか!!!』


「なんでそんなこと言われなきゃいけないんじゃ!!」


『誰だってそんなに打てなかったらそれぐらい思います!!!』


「なんじゃと?!」

「ちょ、2人ともやめろよ試合前に…」


『だって良太さんが!!!』


「葵、いくぞ」


『鳥谷さんっっ!!!』








そのまま葵は鳥谷さんに連れられて行っちゃったんじゃけどな。


あのときはちょっとイライラしてて葵に図星をさされたから思わず八つ当たりしてしまったんじゃ。






葵が言うたひどいことというのはおそらくわしに打てないということを言ったことだろう。


そんなことのためにわざわざ泣かんでも良いのに…




「葵、すまんな。」


『っ、ごめんなさ、』



「八つ当たりしとったんじゃ。わしもガキじゃのう」


『っ、ぅ、ほん、と…?』



「ほんま、ごめんな(ぎゅう)」


『ぅ〜…っ」











ほんとにわしは馬鹿だと思う。

葵はいくら気が強くても女の子じゃ。野郎とは比べものにならない。
しかもまだ20になったばっかしの子供なのに。

なんでそんな子に八つ当たりなんてしたんじゃろう。


気を使ってくれただけだというのに。




でもそのホームランはその葵を思ってというのもある。


最後の打席になってやっとわかったなんて、わしはほんとに馬鹿じゃ。









…とにかく、
4番として、
最低限の仕事ができて良かった。



















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