*テニス短編

□低血圧
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「架弥、起きんしゃい」

兄の雅治の声が聞こえる。
もう朝か、と思いながら布団から顔を出すと眩しい日差しに目が眩む。
マネージャーも朝練があるため早く起きようと思ったが、布団から出たくない。
というよりは出るのがダルい。
体か動かない。

『後5分…、朝練先に…』

寝ぼけながら答えると

「だから起きんしゃいって言ってるじゃろ」

すぐ近くで声が聞こえた。
渋々布団から顔を出すと、ベッドの隣に兄がいた。
だが眠気がまだ大きい私はベッドに寝たまま返事をする。

『…おはようしゃん』

「おぅ、おはようさん。早く起きんと真田の鉄拳喰らうぜよ」

雅兄の言葉に飛び起きた。絶対にあの拳は喰らいたくない。
あんな鉄拳喰らったら、下手したら骨折どころか首飛ぶんじゃないだろうか。

「相変わらず、架弥は寝坊助じゃのぅ」

雅兄には言われたくない。

『雅兄こそ…よぅ早く起きれるのぅ。低血圧なのになぜじゃ』

そう聞くと、ニヤリと笑った。
嗚呼、その顔が凄く色っぽく見える私は妹としてどうかと思う。

「そりゃ可愛い妹の寝顔をみるために決まっとるじゃろ」

こんな台詞はもう何回も聞いた。
雅兄に半ば呆れながら起き上がると溜め息をつく。
突っ込もうにも眠い。
いい加減支度をしなければ、本当に遅れる。

『…もう前みたいにはときめかんぜよ』

「プリッ」

雅兄は返事の代わりに訳のわからない台詞をはいた。
変な言葉を言うのが雅兄の癖だ。

『…さっさと朝練行くぜよ』

支度を始める為に1Fに降りる私に、雅兄はノロノロと付いてくる。
なんだかんだ言って、やっぱり眠そうだ。
そう言う私も同じく眠い。

低血圧な私達の朝は、
そんなやりとりから始まる。
幸せな毎日の一部。



END

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