*テニス短編
□36℃
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真冬の学校の帰り道。
部活が終わったから、幼馴染みの光と家に帰っとった。
関西でも真冬やから手とか耳がめっちゃ冷たい。
光もポケットに手いれて寒そうにしとる。
風が吹くと寒さに肩が震える。
「やっぱ寒いなぁ」
「冬やからしゃーないやろ」
思わず出た愚痴に溜め息をはかれる。
冬やから寒いってのはわかってるんやけど、やっぱり寒いもんは寒い。
東京とか神奈川の人はもっと寒いんやろうけど。
文句を言うウチとは別に光は無言で歩いとる。
多分、相当寒いんやと思う。
「光〜、手貸して。」
* * * * * * * * * * * * * * * *
俺は幼馴染みの架弥と一緒に家に帰っとった。
さっきからめっちゃ寒そうにしとる。
口開いては「寒い寒い」言うとる。
どんだけ寒いねん。
けどやっぱり寒いんやろう、手を擦り合わせては息吐いとる。
「光〜、手貸して。」
いきなり架弥が手を出してきよった。
大方、俺の手が暖かそうにでも見えたんやろ。
「俺低温やから冷たいで」
わかってる筈やのになんでやろかと思いながら聞くと
「ええの」
と返ってきた。
不思議になりながらポケットから手を出すと、架弥に手をとられる。
何やと思って架弥の顔を見ると、
「ほら、光の冷たい手が暖かなるやろ」
そう言いながら笑った。
掌から伝わる体温と架弥の優しさに恥ずかしくなった。
「………熱いわアホ。」
そう自分では言いながらも架弥の手をぎゅっと握る。
すると架弥も握り返してくるから、心まで温かくなる。
自分の体温より少し温かい
36℃
END