*おそなえもの

□色
1ページ/1ページ


変わらない日々が続いている、誰もこちらを見もしない。
たまに誰かがチラリと視線をこちらに向けるが見るだけでなにもせずに通りすぎていく。
…おちたものだ。
昔は権力の弱い小さな地方神だとしても、村人は参拝やお供え物をする人がたくさんいた。
しかし、時代は流れて数百、千何百年と経った今では誰も参拝なんかしない、むしろ近寄りさえしない様になった。

しかし、ある日そんな小さな神様の私の元にお供え物を置いた人物が現れた。
賽銭をしに来る人は沢山いたがお供え物を置いてくれる人は少なかった為珍しく覚えていた、青い髪の女性の様な綺麗な顔立ちの学生さんだった。
いい臭いのする綺麗な花を少しだけ置いてくれた。
何て良い人間なんだ、危険が迫れば助けでもしよう。
その日から度々青い髪の人は花やお菓子を置いてくれるようななった。
黄色いジャージをいつも着ているので部活帰りに此処に寄っているのだろう。
ありがたい事だ。

しかし、冬のとある日を境にその人はピタリと来なくなってしまった。
来る人は賽銭をしてすぐに帰ってしまう、寂しくなった。



と、そんな寂しい春の少し前のある日。
数人の中学生が私の元に訪れた。
例の青い髪の少年と同じ服装をしている、同じ学校の人間か。

「ほぅ、まさかこんな所に神社があるとはな…」
「俺のデータにも無い…となると大勢の人間に知られている確率17.3%」

…煩せぇ、人が少ないのは自覚済みだ。
失礼な事を言う二人は社をじっと見つめて観察している。
何コイツら、迷惑じゃね?

「参謀も知らんなんて…哀れな神社じゃのぅ。」

…ほっとけ、白髪野郎。

「まぁまぁ、幸村君に頼まれた物を置いて早くお見舞いに行きましょう。」

そう言いながら大福を取り出す眼鏡の人は何となくいい人だと思った。
幸村君って誰だろう、と思いつつ黄色ジャージ御一行の様子を見守る。
大福を供えた後は、賽銭をしてくれた。
踵を返すと、黄色ジャージの人達はそのままぞろぞろと来た道を引き返して帰っていった。
…賑やかな人達だった。




しかし、数分後。
帰ったかと思った黄色ジャージの人達の中の赤い髪の少年は何故か社の方に向かって歩いてきた。
そして、ついさっき眼鏡少年によって置かれた大福を遠慮なく口に放り込んだ。
は…何こいつ。

「あ、ブン太っ!何やってんだよ。」
「罰当たるもんじゃねぇだろぃ」
「いやいや、絶対あたるだろ」

外国人の子が止めたにも関わらず赤髪は一瞬にして大福を全て食べてしまった。
…赤髪のやろう、罰当ててやる、後悔させてやる。


食べ物の恨みは怖いんだぞ!!!!!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ