short

□過去の拍手
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「L?どうしたの?」
先程からずっと窓を開け夜空を見上げているL。
そんな猫背では見上げるのが苦しそうだ。
「いいえ、少し昔を思い出していました。」
指を唇において、まだ視線は空から外さない。
「・・・昔?Lの小さい頃とか?」
もしそうだったら知りたい。
この人が無邪気な子供だったなんて想像がつかない。
「残念ながらそこまで昔ではありませんよ。」
Lは微かに笑みを浮かべ窓を閉めた。
少し風が冷たくなった。
「昔、月を追いかけていたことがあったものですから・・・。」
「月を?なんだか不思議な話ねぇ」
「・・・そうですね。・・・少し冷えました。紅茶をいただいてもいいですか?」

そう、全てが非現実的で夢のようだった。
まあ、今の自分も夢のようではあるが。
こんなに落ちついた毎日が自分に訪れ、それを自分が受け入れると思いもしなかった。
ソファに座り煎れたての紅茶を飲みながらLはもう月を見ることは無かった。

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