光芒

□2008.06.03 23:07
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「そうですか…判りました。あなた達は引き続き上海に?はい、…いえ、ではお願いします。」
竜崎は淡々と会話を終え、椅子を回転させモニターに背を向けた。

「名無しさんさんが拉致されました。」
「えっ。」
「なんで?」
メロとマットが声をあげる。
「カメラもマイクも名無しさんさんにつけていなかったので判りません。最後に一緒にいたジェバンニのカメラの映像です。」
そう言ってモニターに視線を戻す。

モニターに名無しさんの背中が映った。
『子供をお願い。』
名無しさんの声。
乱れる映像。
銃を撃つ名無しさんの腕。
遠くに倒れる男。
『早く!』
怒鳴る名無しさんの声と横顔を最後に映像は一層乱れ、明るい廊下が映った。

「部屋を調べたら他に女の子がいた形跡がありました。おそらく、その子を人質にして名無しさんさんを拘束したんでしょう。」
「竜崎、よくそんな冷静に。名無しさんは無事なのか?誰なんだよ、連れて行ったのは?」
メロが掴み掛らんばかりに竜崎に怒鳴りつける。
「拉致した男達はチャイニーズではないようですね。となるとすぐには絞りきれません。当然、名無しさんさんの命がかかってます。上海でニアも必死に調査しているはずです。」
「くそっ。」
メロが近くにあったゴミ箱を蹴飛ばす。
マットは新しいタバコに火をつけようとしたがうまく火が点かず、舌打ちした。
「王孫新が関係しているのなら、名無しさんさんに手荒なマネはしないでしょう。問題はそうでない時です…。」
竜崎は自分のジーンズのすそをぐっと握りしめた。
「…助けます。何としても。何に代えても…。」
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