光芒

□2008.05.13 22:17
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「ごくらく、ごくらく。」名無しさんはちゃぽんとお湯につかって息を吐いた。
ワタリに案内してもらった部屋はすでに快適な温度になっており、バスルームは乳白色の湯が張られ、バラの花びらが浮いていた。
さて…どうしたものか…天井を見上げて名無しさんは今日の出来事を振り返った。
せっかく和気あいあいな空気だったのにさ、あのパジャマっ子とチョコりんぼが台無しにしちゃって!
思わずバラの花びらを握りしめていた。
「ま、あれ見せて信じてもらおう。」
勢いよく立ち上がり、花びらを体に張り付かせながら名無しさんはバスルームを出た。



「Blue moonでしたか…。」ニアがタロットカードを箱から出しながらつぶやく。
「『月光』の中でも超有名人…すげーな名無しさんちゃん。」マットがニアに近づきタロットを珍しげに触りだした。
「マット、やめてください…メロ、マットが邪魔です。」
「・・・。」
「マット、返してください。メロ、マットを早く…、メロ?」
メロは何かを考え込んでいる様だった。
「どうしました?メロ?」竜崎がマカロンをつまみながら聞く。
「あいつ…夜神にも父親のこと言わなかったな。父親どうしてんだ?」
「半年程前から音信不通だそうです。夜神さんが本人から来日前にメールで教えてもらったと聞いてます。」
「何か…隠してる気がすんだよ。くそっ、うまく言えねぇ。」
メロがイラつきながら髪をガシガシかく。
その様子をみた竜崎が指を口に当ててしばし考える。
「マット。あなたこれから名無しさんさんの部屋に行ってください。」
「は?オレが?何で?」
「あなた前に言ってましたよね?酒の相手がいなくてつまらない…と。幸い名無しさんさん成人ですから、相手してもらいなさい。」
「何それ?確かにオレ言ったけどさ、名無しさんちゃんの部屋とか興味あるけどさ、オレ、誘導尋問とか苦手だしー。」
さすがにマットも竜崎の提案の本当の意味が分かって来た。
「でも、竜崎も私も話が弾まなそうですし、メロは目つきが悪いのでマットしか適任者がいません。」
「目つき関係あるか?」メロがニアを睨んだ。
「訂正します。メロは目つきも悪いのでマットしかいません。」
「ニア、お前ケンカ売ってんのか?!」メロが立ち上がった時、
「動きました。やはりバスルームにいたんですね。」竜崎がモニターの前の椅子にいつもの座り方をした。
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