光芒

□2008.05.13 16:27
1ページ/8ページ

「これは…。」
「すごい経歴ですね。」
模木と松田が絶句する。
「スジャル王国の第2王子誘拐未遂事件…これ覚えてますよ。学校のキャンプ中に起きたんですよね?」資料をめくりながら松田が言った。

「そう。当時10歳の第2王子がクラスメート14人と引率の教師2人で課外授業で行ったキャンプ中に襲われました。王子のボディガードとして同行していた名無しさん名無しさんが、森の中のゲリラ戦を一晩耐え抜き、民間人、王子ともに無傷。一緒にいたボディガードはケガを負いましたが、犯人グループ5人のうち、3人射殺、2人はナイフで死亡。名無しさん名無しさんはスジャル王国の英雄となりました。」資料を両手でつまみ、竜崎が説明する。
「射撃の腕は確かってことだな。」マットが煙草をもみ消しながら言う。
「お前より…な。」チョコをパキッと折りメロが口を挟む。
「なんだよー、メロ。俺だってなかなかのもんだぜ?」
「どうだか…。」
「どうしました?月くん。先程から静かですが。」
月は資料を見つめたまま黙っている。資料も持ってるだけで頭には入っていないようだ。
「ん?あぁ、ちょっとまだ信じられなくて。僕の知ってる名無しさんちゃんは優しくて、いつも笑っているお姉ちゃんってイメージだから。」
「いかつい姉ちゃんになってんじゃねぇか?月、イメージ壊れても知らねーぞ?」マットが楽しそうに言う。
「それにしても気になるのは、ここ2年程の行動が全く表に出ていないことですね。これだけの実力があれば、放っておかれないはずですが。」
昨日竜崎が食べたキャラメルの箱のサイコロを使ってタワーを作っていたニアがつぶやく。
箱が軽い為、さっきから積んでは崩れ…を繰り返している。
「まぁ、それは本人から聞くことにしましょう。そろそろ日本に着くはずです。」
竜崎は砂糖が溶けきれず沈んだ紅茶をズズッとすすった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ