光芒

□2008.06.03 23:07
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「ここは…。」
薬で眠らされて気が付けばベッドの上だった。
広くはないがシャワールームもトイレもある。
窓はない。まるで安いビジネスホテルの部屋だ。
名無しさんは自分の体を見つめた。
着ているドレスはそのまま。
縄や手錠で体の自由を奪われている訳でもなかった。
部屋の奥にドアがある。
外側からカギをかけられるようになっている。
カギを回してそっとドアを開けてみた。
「お姉さん!」
一緒に連れられてきた女の子だ。
「良かった、無事だったのね。あなた名前は?」
「…ありさ。」
「そう、ありさちゃん、いい子ね。一緒にいましょう。」
そう言って名無しさんはありさの肩に手を置いた。
…ありさ。5月に日本で誘拐された女の子の名前だ。

バタンッと荒々しくドアが開き、大柄な男が入ってきた。
「お目覚めかい?お嬢さんがた。」
ありさは怯え、名無しさんの後ろに隠れた。
「ここはどこなの?」
名無しさんは男を睨み聞いた。
「教えられないが、しばらくお前達にはここにいてもらう。このチビに手荒なマネをされたくなかったら、大人しくするんだな。」
男は名無しさんの顎を持ち上げながら言った。
「女1人言うとおりにするのに、子供を使わないとダメなんて情けないわね。」
強い視線を逸らさずに名無しさんは言った。
「ふん。」
と男は鼻で笑い、おもむろに名無しさんを平手で打った。
「お姉ちゃん!」
倒れた名無しさんにありさが駆け寄る。
口に鉄の味が染みた。
「殺しはしねぇ。今すぐはな…。」
そういうと男はありさの手を掴み、無理やり別室に連れて行った。
「いやっ、お姉ちゃん。」
ありさの声がドアの閉まる音で小さくなった。
「あの子に何をするの?」
「何もしねぇよ。さっきも言っただろ?お前次第だ。」
そういうと男は名無しさんの腕を引っ張りベッドに投げ出した。
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