本家のあまのじゃく
□懊悩
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<ゆらside>
「また失敗や!!」
私は廃ビルでいつもの様に修業をしていた。
妖怪同士が争ったあの晩、陰陽師なのに何も出来んくてしかも百鬼を率いるあいつと名無しちゃんのお兄ちゃんに助けられた。
陰陽師が倒さなあかん敵のはずなのに、そいつに人を守れと言われた。
妖怪は絶対的悪――
だけどあいつは、二度も私を救ったあいつは、ホンマに悪なんか――?
「ダメや!!そんなこと考えてたら…!
集中や!!妖怪は倒すべき敵なんや!!」
「花開院さん?」
後ろから声がして振り向くと、奴良くんと名無しちゃんがいた。
『こんなところにいたんだね〜。』
「奴良くん…名無しちゃん…?」
「そっか!学校になかなか来ないと思ったらこういうことしてたんだね。」
『もう夏休みに入ったよ。』
「知ってる…。終業式は顔出したから。
…奴良くんと名無しちゃん2人…?」
『え?』
「いつもまわりに誰かおるやん…及川さんとか。」
「あ〜。いや、実は今みんなで手分けして花開院さんを探してたとこなんだよ!」
「みんなで?」
『うん!清継くん達心配してるよ〜。』
「…私なんか…みんなの前になんか出られへんよ。情けなくて。
全然妖怪から守られへんし…。」
「……それで修業?」
やなとこ見られた…。
きっと2人とも笑うんやろな…。
『すごいね!』
「えっ?」
「だってさ、1人だよ?
進んでこんなとこ来て修業なんて、誰にでも出来ることじゃない。すごいな花開院さんは…憧れちゃうよ!」
奴良くん――
『私もそう思うな!自分だったら絶対出来ないよ〜。』
名無しちゃん――
奴良リクオくん――
学校ではいつも目立たなくて、みんなのパシリみたいで気弱で―――
懐古名無しちゃん――
少し掴み所の無い子だけど、とってもええ子で私にも良くしてくれる―――
グゥゥーー
「あ。」
「え。」
「い、今のはお腹の音やないからね!!」
「良かった。一個だけあった。花開院さんチョコ…大丈夫だよね?」
そう言ってチョコを私に差し出す奴良くん。
…おじいちゃんと同じことした…。
奴良くんのおじいちゃんは優しかった…。
でも…なぜあの時あの場に…?
ああ…ダメや。
一度疑うと…悪い方に辻褄があってしまう。
こんな奴良くんがあいつに――繋がるわけないやん。
「ありがとう…。」
「みんなに連絡するね。」
そうや違う―――
でもそうだったら……?
妖怪は絶対的悪…だから倒さなきゃいけない…?
奴良くんを?
奴良くんに正直に聞いてみたい。
答えてくれるかもわからん。
奴良くん、奴良くんは―――
「やっと見つけたぜ、ゆらぁ…。」
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