05/05の日記
16:52
3人だけの秘密(ネロ、オーエン、ブラッドリー)
---------------
「なぁブラッド、もし暇なら俺の部屋に来てくれ。」
「んぁ?急にどうしたんだよ。」
「ちょっとな。無理ならいい。」
「別に良いぜ、コイツの手入れが終わったら行く。」
そんな会話をしたのが20分ほど前。
ブラッドリーはネロの部屋を訪ねて驚いた。
パリッパリに焼けたブルスト、こんがりと焼き上がった宇宙鳥とマカロニ菜とコンキリエのグラタン、ハンバーグのグリル、薄く切ってムニエル風に焼いたカルパッチョ、シリアルとジャムと生クリームとカスタードを重ねたパフェ、数種のフルーツパイ、ファルファーレのクリームシチュー、籠にはパンやスコーンも盛られている。
ネロは淡々と料理を作り、テーブルではオーエンが料理をせっせと食べている。
「ブラッドリーも来たの、食べれば?僕一人じゃ無理。」
「あ、ああ。いや、つーか何事だ?おい、ネロ?」
「何事って訳でもねぇんだけど…取り敢えず食え。」
そう言いながらネロはテーブルにハーブクリームソースのかかったロブスターのグリルを置いた。
「つーか、何でオーエンがいるんだ?」
「ネロがご飯と甘いのくれるって言うから。最初は何かあるのかな?って思ったけど、とっても美味しい。」
満足そうにオーエンはダブルルージュベリーのパイを食べきった。
ブラッドリーも取り敢えず手近にあったブルストを口にする。
歯を立てた瞬間にパリッと皮が弾けて、ハーブの風味と塩気のある肉汁が溢れ出した。
「うっ…ま!酒欲しい…」
「美味しいよね。ネロ、このグラタン好き。いつもと違うパスタなんだね?」
「ああ、いつものはペンネっていうパスタ。今日のはコンキリエ、貝みたいな形のパスタでソースが絡みやすいんだ。オリーブオイルに抽出したハーブオイルも混ぜてある。」
「ふぅん、白くてどろどろ…熱くて歯応えがある、チーズもちょっと違う…?うん、好き。」
「オーエンは舌が良いな。チーズは普段パルミジャーノを使うんだが、今回は安くでゴーダが手に入ったんだ。気に入ってくれて良かった。」
「うん。伸びるの、楽しい。」
「ははっ、チーズの楽しみだな!もうすぐチーズケーキが出来るよ。」
「ケーキ、やった♪」
目の前で行われているやり取りを眺めながらブラッドリーはハンバーグのグリルを口にする。
トロリとオレンジ色のチェダーチーズが、焼けたミンチ肉の塊から肉汁と共に溢れ出す。
「どうだ、ブラッド?美味いか?」
口一杯に頬張りながらブラッドリーは頷く。
「駄目だよ、ブラッドリー。ちゃんと感想を言わなきゃ。……うん、このスコーンも美味しい。何か塗ってある…シロップ?」
「ああ。焼き立ての内にメープルシロップを塗って冷ましたんだ、生地の粉の配合も少し変えてみた。」
「うん、いつものよりさくってする。でも中の方は少し甘くて柔らかい、シロップの所はつるってしてる。」
ハンバーグを平らげたブラッドリーは水を一気に飲み干す。
「ぷはー!美味かった!つーか、お前ら…そんな仲良かったか?」
「仲良しだよ?だって、いつも美味しいご飯作ってくれる。」
「まあ食べ方はアレだけど…美味そうに食ってくれるし、感想も言ってくれる。」
「へえ…つーかこんな美味いもん、俺らだけで食って大丈夫か?」
ブラッドリーはロブスターのグリルを頬張りながら、ネロを見る。
「まあ、これは俺が試作用で買ったもんだから…作ろう作ろうって思ってて何やかんや時間無くて、やっと作れたんだ。けど、今日逃したら…またいつ作れるかわかんねーし、それでつい夢中になってたら…」
「作り過ぎたんだな…。」
ペロリとロブスターを食べ終わったブラッドリーにネロは珍しく悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「今日は僕らくらいしか残ってないもんね、皆お城や任務や買い物に出掛けてるから…ふふ、可哀想。後で自慢してやろうかな、悔しがるかな?」
おいおい、と苦笑いするネロにブラッドリーはニヤリと笑った。
「それも面白いけどよ、折角の珍しい機会だ。3人だけの秘密にしねえか?」
「3人だけの、秘密…?」とオーエンはキョトンとした。
「此処で過ごすようになってから俺達は他の奴等と共有ばかりしてるだろ?何か一個くらい秘密があった方が面白いじゃねえか。」
ブラッドリーの提案に興味を擽られたネロがのった。
「そうだな!別に悪い事を隠す訳じゃねーし、オーエンとブラッドと俺だけの秘密にしようぜ。な?良いだろ、オーエン?」
「お揃いじゃなくて、僕らだけの秘密…ふぅん?面白そう、良いよ?」
3人は悪戯っ子のように笑う。
「じゃあ、俺様からの口止め料はこのとっておきの酒だ!」
「俺は料理出してるから良いよな…?」
「僕は黙っててあげるんだから良いよね?あ、でもネロにはこれをあげる。」
オーエンが魔法で出したのは北の国のルージュベリーの花と蜂蜜で作られた珍しいリキュールだ。
「これで美味しいの作ってくれるなら黙っててあげる。」
「珍しい」と驚くブラッドリーの横で、ネロは目を輝かせて喜んだ。
・
前へ|次へ
□ コメントを書く
□ 日記を書き直す
□ この日記を削除
[戻る]