05/03の日記

01:19
清光とサンドイッチ
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余った挽き肉があったので、其処に卵とパン粉と擦り卸した山芋、塩コショウにナツメグをしっかり混ぜて捏ねる。

そして細切りチーズも混ぜ込んでおく。

粘り気が出たらフライパンに適当に切ったトマトを熱していき、水分が出てきたら捏ねておいた挽き肉を小さな楕円形にして並べていく。

粗方火が通ったら蓋をする前に卵を落としてから蒸し、バゲットに縦の切れ目を入れてレタスとカイワレ大根とバジルリーフを詰めたら、蒸した肉と卵を挟んで完成だ。

ロコモコ風バゲットサンド。

デミグラスではなく、純粋なトマトソースだけれど。

其処にパルメザンをかけて、あとは頬張るだけだ。

出来上がった其を目立たぬように袋に入れて、持って向かうのは審神者部屋だ。

中には可愛い初期刀がシュンとして座っていた。


「清光、ご飯食べようか。」

「…え…?」


先日審神者部屋の前で一日膝を抱えていた清光は、審神者部屋に呼んだ時から落ち込んでいた。

この子の事だから叱られるとでも思ったんだろう。


案の定「怒ってないの…?」と聞いてきた。


怒ってない、一緒にご飯食べようと思っただけだと伝えれば、嬉しそうにはにかんだ。


「わあ…!これ、サンドイッチ?お肉ある!卵も乗ってる!」

召し上がれ、と言えば「いただきます」と言ってサンドイッチに噛みついた。

バリッとしたバゲットの音がして、同時にレタスのシャキッとした食感とバジルリーフの風味。

かと思えば山芋入りの柔らかい肉の食感と煮詰められたトマトの食感。

トマトで煮込まれた肉が、噛んだ瞬間にジュワッとスープを溢れさせて存在感ある旨味がこれでもかと涌き出てくる。

そして肉に混ぜ込んだチーズが蕩けて、卵も一緒に食べれば半熟の黄身のトロッとした濃厚さが全体に行き渡る。

「んんーーーーっ!!」

いつも見た目を気にする清光が、口一杯に頬張って、桜を舞わせている。

とっても可愛い。


そっと横髪を耳にかけてやれば、頬を染めてニコリと笑った。



おわり

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01:16
チーズ
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チーズ。

其れは肉にも劣らぬ誘惑の塊。

クセがなく食べやすいもの、塩気の強いもの、ミルクの風味が優しくまろやかなもの、スモークされたものから篦棒にクセの強いものまで幅広く個性的だ。

味も個性的なら硬さもそうである。

クリームのように柔らかいもの、水気が少々抜けたさっぱりしたもの、もっちりしたもの、粉にして食べるもの、シャリッとした歯触りのもの。

溶かして食べるものもあれば其の逆に、焼いて食べるものもある。

熱で溶けずに焦げ目がパリッとして中はトロッとしている変わり種や、糸引の良いチーズが熱で溶けて幾筋も糸を引く様を見るのは最早溜め息しか出ない。


何とも幅広く、個性的で、魅力的な芸術……チーズとはそういうものなのだ。



今朝はそんなチーズを使って何か作ろうと、厨でパンを切る。

未だ朝とも言えない5時前、空は濃紺で空気も未だヒヤッとしているが寒くはない。

昨晩の食事は少々溜め込んだ書類と部隊編成も兼ねた為、その場凌ぎのお握りだった。

朝餉までは腹が持たない、得に近侍の祢々切丸等は得に辛かろう。

祢々切丸のサポートで小夜もついているが、二人とも戦の事以外は口に出すタイプではない。腹の方が正直な二人だ。


さて、先程の二人の腹の音を聴くには多少食べ応えのあるもので簡単なものが良い。

そして、よく噛むものが良い。噛む事で満足感は刺激されるし意識も覚醒するのだ。


ふと視界に入ったのはパン。

つまみ食い防止や夜戦・遠征帰りの子達が夜食として簡単に食べれるようにと、燭台切が毎日時間を見て次の生地を作りながら一生懸命用意してくれているものだ。


今日あるのはカンパーニュ、ライ麦パン、コッペパン、胡麻パンだ。

サンドイッチ、これが良い。

幸いパンはどっしりしたものがあるし、冷蔵庫には野菜とチーズもある。

ハムなどを挟めば確かに美味いが、野菜こそチーズの旨味を生かしてくれるものだと個人的に思っている。


人参と大根と胡瓜を細切りにしてトマトを小さな角切りにしたら、ボウルの中で混ぜる。

そして更にモッツァレラチーズを少し大きめの角切りにして、オリーブオイルと塩・バジルとオレガノを加えたらよく和える。

モッツァレラではなく、チェダー・カマンベール入りのチーズ・カッテージチーズにしても其々良いだろう。(カマンベールではなく、カマンベール入りというのが大事だ。)

野菜を、得にトマトを多めに入れるのも個人的なコツだ。

本当ならドレッシングや胡椒や七味に胡麻油等をかけても良いが、シンプルだからこその良さがある。


レタスを多めに洗って用意出来たら愈々パンだ。

燭台切が大きめに作った円いカンパーニュ、これを横に半分と少し切れ込みを入れる。

パリッと、中はフワッと、これだけで美味しいだろう。


さて、出来上がったサンドイッチを持って審神者部屋に行く。

審神者部屋では祢々切丸と小夜が温かい麦茶を入れて待っていた。

最近来た祢々切丸と近侍サポートの小夜…二人並ぶと絵面が凄いが、この二人、其れなりに話が合うらしい。

二人に作ったサンドイッチを渡すと「いただく」「いただきます」と一気にかぶり付いた。

シャキッとしたレタスにパリパリとした、たっぷりの人参と大根と胡瓜。

角切りにしたトマトの酸味と汁気に程好く絡んだオリーブオイルの風味とハーブの風味が良い。

そして合わさるモッツァレラチーズは大きめに切ってるので、そのモチッとした食感が楽しい。

モッツァレラ自体は塩気は少ないがオリーブオイルとハーブの風味に足した塩、それをたっぷりの野菜の味が引き立てていた。

そしてシャキッ、パリッ、モチッ、トロリとした其々を纏めるのがカンパーニュの存在である。

香ばしさ、外のバリッとして中がフワッとして、何よりどっしりとした存在感は二人の心を完全に虜にした。

見た目が細くて口も小さな小夜が豪快にかぶり付いているのを見るのは気持ちが良いし、祢々切丸の見目に見合った噛みつきようも良い。

「美味いな、これは…野菜ではない、のか?」

首を傾げる祢々切丸に小夜が「もったれらちぃず、って言うんだって」と告げる。

「もったれらちぃず…」

「うん、もったれらちぃず…僕は好きだよ。」

二人ともあっという間に食べ終わり、少し冷めた麦茶を飲み干した。

「ごちそうさま」

「馳走になった」

と、満足そうに笑う二人に「どういたしまして」と言う頃には、うっすらと東の空が明け始めていた。



朝餉の時間、燭台切が気を利かせて「多めが良いかな」と米の量を聞いた際に主の手作りサンドイッチの件が発覚して一時騒動になったが…

何より初期刀の清光が審神者部屋の前で膝を抱え、遠い目をしながら庭木の剪定を丸一日していた長谷部、其を丸一日無表情で眺めていた巴。

三つの異様さが他の騒動を終息させた。





おわり

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