03/18の日記

07:56
夜食2
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夜も少しばかり更けて、直に午前0時となる頃。

今日も大事をとって寝かされていた長谷部の代わりに審神者の手伝いを終えた清光が、遅い夕食代わりの夜食の仕度をしていた。

「今日は何作ろうかな。」

長谷部が寝込んで3日、初日には新刃の祢々切丸が急遽加わったが…

「(あの時は豆腐の粥、昨日は眠かったから味噌汁とご飯だけだったし…今日はちょっとしっかり食べたい気もする…)」

そんな事を考えていると

「…ん?」

一瞬、何か聴こえた気がした。

「……、………、」

「…誰か、居るの…?」

無意識に包丁を握った。

すると、ガッと厨の戸の低い位置に手が掛かった。

清光は悲鳴を上げそうになったが、其処に居たのは…

「加州……頼む…飯を、飯を食わせてくれぇ…」

這いつくばるようにして現れた、寝込んでいる筈の長谷部だった。



「燭台切の言う事聞かないでご飯食べないからだよ。」

取り敢えず長谷部は座らせた。

「面目ない…」

「粥と饂飩、どっちにする?」

「お前と同じで構わん、多めで頼む。」

「急に食べたら具合悪くなるんじゃない?俺は元気だから良いけど。」

「俺ももう大丈夫だ。熱も何もないのに主が今日まで寝ておけと言うから寝ていただけで…其れがショックで食欲が無かっただけだ。」

清光は呆れたと小さく溜め息をついた。


「はい、お待たせ。」

運ばれた料理に長谷部は感嘆の声を出す。

「豆乳と味噌とホワイトシチューのルーの余りで作ったスープ饂飩、煮物の残りも入ってる。あと卵焼き。」

「いただく!」

長谷部は早速スープ饂飩を啜った。

豆乳とコクのあるシチューの風味にほのかに味噌の味が溶けている。

一緒に煮込まれた煮物の残りも元が味噌風味なのか、味が丁度解け合っていて美味い。

卵焼きは出汁巻きでも甘くもない、塩と薄口醤油のきいた卵焼き。

やや固めの中までしっかり火の通った、しかし焦げてはいない。

其れは卵に豆乳もしくは牛乳を混ぜて焼いたからだ。

最初の頃に長谷部が食べた清光の卵焼きだ。

今では清光が厨に立つ事は殆んど無く、卵焼きと言えば出汁巻きという刀が多いので常になりつつあるが…長谷部はこのシンプルな卵焼きが好きだ。

因みに同田貫や薬研、大倶利伽羅に小夜も此を好んでいる。

初期のメンバーしか知らない加州の卵焼き。

燭台切の場合は顕現した時に初めて習ったのが出汁巻きだった為、自分の知る伊達巻は違う料理で出汁巻き=卵焼きなんだと思ったらしい。

しかし、こっそりと清光に卵焼きを依頼している同田貫達を見て出汁巻き=卵焼きではないと知ったんだとか。

皆に教えても良いのだが、これはこれで初期メンバーだけの秘密にしておくのも良いだろうと暗黙の了解だ。


「お前の卵焼きは相変わらず美味いな、飯が進む。」

「其れは嬉しいけど、饂飩食べて更に米食べてるのが凄いよね。」

「ろくに食ってなかったんだ、見逃してくれ。」



こうして無事に翌日から復帰した長谷部だったが、燭台切に「大丈夫?ずっと食べて無かったしお腹空いてるよね」と言われて

うっかり「いや、昨日の夜に加州が」と言いかけてしまった処で「何作ってもらったの」と厨にいた燭台切、大倶利伽羅にも注目され、白状させられた。


暫く厨から「狡いよ!抜け駆けだよ!僕もうずっと食べてないのに!起こしてくれたら良かったのに!」と珍しく燭台切が喚いている姿に、後から起きてきた一同は首を傾げたのだった。

ただ溜め息をつく加州を見つめる大倶利伽羅、同田貫、小夜を除いては。






終わり

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