10/19の日記

05:00
リクエスト3:ニャンコのもてなし
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秋の夕刻、18時。

ついこの間までは未だ明るかったのに、いつの間にか日暮れも随分早くなった。


先ほど終えた夕食の片付けをしながら銀時は沁々と思う。


「(そういや何となく水も冷たくなったな)」


トコトコトコ

流し台で洗い物をしていると、足元に軽やかな触り。


ふと見てみれば愛しの黒猫が俺の片脚に肉球タッチ。


元々は飼い猫の晋助、捨てられてから何百何十年と生き、今は人にも化けられる不思議な猫。

この晋助も家に来てから随分馴染んで、キスして寝る癖が出来たり、朝の俺の股間に1mは近付かなくなったり。


逆に寝る時や夕食後などは近くに来て座っていたり、肉球タッチしてきたりする。


「どした?」

『ゴハン、ごちそうさま。』

「どういたしまして、給料出たら奮発して●の匙でも買おっか。そういえばさ、晋助はカリカリ派?缶詰派?」


黒い毛並みを撫でながら尋ねる。


『‥そんなものは要らねェ。俺は食わなくても生きていけるし、今の食事が好きだ。』


何も食べなくても大丈夫だが、銀時は晋助にも食事を与えた。

主に猫マンマだが、時々焼き魚もある。

「晋助は猫マンマ好きだよなぁ、俺としては一緒の物で助かるけど。偶にはアレ食べたいとかねぇの?」

『ない。猫マンマが猫の口に合わないわけねェよ、食うならアレが良い。』

「そっか。」

頭を撫でる手が気持ちよい。


この時はそう言った晋助だが、本心では他にも理由はあった。


それはとても純粋な気持ち。


いつからか食べなくなったゴハンを、また食べれるようになったのは嬉しい。

しかしそれ以上に

銀時が作ってくれた、銀時と同じものを自分が食べられるという事が嬉しかったのだ。


『俺も何か、出来ればな…そうだ。』


晋助は一案思い付いた。


……


「ただいまぁ、」


玄関で声がすると晋助は人の姿になり、いそいそと茶碗にご飯を盛った。

慣れない杓文字でそっと慎重に。


「晋助〜?」


ひょっこり顔を見せる銀時の手を掴んだ晋助は鍋の前まで引き寄せる。


「銀時、火を点けてくれ。」


「火?てか、え?晋ちゃん料理すん?」


「火は使ってない、準備だけだ。早く火を点けてくれ。」


言われるまま火を点けながら鍋の中身を見れば、鰹節と水と味噌。

「味噌汁欲しかったの?」


「…」

晋助は鍋をジッと見つめながら鼻を利かせ、銀時に火を止めるよう頼む。

お玉を手にして先に盛ったご飯にかけ、銀時に差し出した。


「銀時、食え…いつも、感謝している…だから。」


「…俺に作ってくれたの?」


「…ずっと、何かしたかった。いつも貰ってばかりだから…猫マンマは嫌いか…?」


銀時は堪らず晋助を抱き締めた。


「ありがと晋助、俺こそ晋助が来てくれて毎日楽しいんだ。猫マンマ、一緒に食べよ?」


銀時は晋助用にご飯を盛った。


晋助は人形になっているので匙を渡し、猫マンマを前に手を合わせる。


「「いただきます」」


二人で食べた猫マンマは特別な味がした。





おしまい

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