08/03の日記
12:12
まなみ様リクエスト
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暫く続いた戦が漸く一息ついた中、攘夷志士達は次の宿場を目指して束の間の休息をとっていた。
白夜叉こと銀時も木に背を預けて休んでいたが、竹筒の水が空になった事に気付き溜め息をつく。
「ヅラァ、この辺って川とかねぇの?」
「この森を抜ければ次の宿場だ、其の近くに川がある。」
「そうか。」
「水なら俺のが少しあるぞ、飲むか?」
「お前と間接キスは嫌だ。」
人の好意を云々と桂は呟いていたが、次の宿場までなら我慢すれば良い。
「聞いているのか銀時、全く貴様は」
「あぁ、ハイハイ。解った解っ…ん?」
その時、偶々見た先に何かが動いたような気がした。
「どうした銀時?」
「いや、何か…」
銀時は静かに立ち上がって近付き、念の為に桂も続く。
「あ。」
「銀時?何かいたか?」
「いや、大丈夫だ。ただ良いもん見っけた。」
銀時の足元には小さな木が実をつけていた。
「なあ、これ木苺じゃね?」
「似ている気はするが…天人が来てから生態系も乱れている。こんな場所の物を迂闊に食べては危険だぞ。」
桂も横から覗いて首を傾げた。
さほど実ってはいないが、甘い匂いがした気がして思わず銀時は手を伸ばす。
「ちょっとくらいなら毒でも平気だろ、それに俺の糖分センサーが大丈夫だって言って…」
その時、パカッと実だったものが口を開いたようにして銀時の指先に噛み付いた。
「ぁ?……エエェェッ!?」
「銀時!?大丈夫か!?」
桂が急いで刀を抜き、取り敢えず茎を斬った。
銀時の指先には木苺のようだった物が萎れて地面に落ち、斬られた植物はザワザワとうねる。。
「気持ち悪っ!!」
「やはり天人か!?」
離れて見ていた仲間達も身構えた。
しかし、桂が刀を振り上げた途端に其れは銀時の姿へと変化する。
桂は驚き、距離をあけたが背中がぶつかり振り返る。
其処にも銀時がいる。
「何の騒ぎだ?」
その時、辺りを偵察していた高杉が歩いてきた。
そして二人の銀時を見て察しがついたらしいが桂は珍しく戸惑っている。
「高杉!銀時が木苺に木苺が噛みついて銀時が二人だ!!」
「落ち着けヅラ、そいつは問題ねェ。放っておけ。」
銀時が見た木苺は植物型天人で、短時間的に他の生物に化ける能力がある。
しかし其れは自らを危険から守り、自らに適した場所へ移動する為の能力でしかない。
「何でオメーがんな事知ってんだよ。」
「此処に来る少し前に聞いたのさ。珍しく人がいたんで話を聞いたら当にソイツと同じ生き物だった。大方この付近の戦に追われて移動しようとしてんだろう。」
「…コ…ココ、スメナイ、イキモノ、イナイ、ウゴケナイ…マッテ、タ…」
銀時の姿をした其れは、話が通じると思ったのか高杉達へ話し掛けてきた。
「…何か喋りだしたけど…つまり移動したいわけか。」
「そうらしい。色々と化けて移動してきたものの、化ける相手がなくなっちまったんだろ。何もこんな馬鹿に化けなくても良かったのにな。」
「オイコラ聞こえてんぞチビ。」
「しかし、銀時の姿でうろうろされても困るぞ?この辺りとて安全とは言えぬし…」
話し合った結果、取り敢えず銀時の姿の間は一緒にいる事になった。
「今の目立った姿じゃ逆に命を狙われちまうぜ、取り敢えず今は俺達と来い。その間は俺と居れば良い。」
高杉がそういうならと志士達も安心して頷いた。銀時以外は。
「高杉君、大事な人物忘れてやしませんか。俺どうすんの、部屋同じじゃん(多分)。」
銀時と高杉の仲的にはそうなるはずだ、いつも何だかんだ理由つけて同室にしていた。
部屋がない場合は雑魚寝だが。
「あァ、取り敢えず俺とコイツは縁側なり外なり雑魚寝で構わねェ。」
「いや別にそこまで…」と言いかけた銀時の言葉は黒子野の言葉に消えた。
「次の宿場は大きめなお寺でしたから、大丈夫だと思いますよ。もし部屋がなければ僕は同室で構いませんから言って下さい。」
「いや、だから…」
「すまねェな、助かる。」
「高杉、俺の部屋でも構わんぞ。何かあれば言え。」
「あァ、ありがとよ。」
「植物の方は銀時さんの姿が解けた時、僕に化けて移動すれば大丈夫でしょう。町に抜ける道もその時に教えますね。」
高杉と黒子野の案に応じた仮銀時は素直に頷いた。
「別に俺も一緒で全然良いしィィッ!!」
桂にまで先を越されて漸く銀時の叫びは届いた。
仮銀時の頭には手拭いを巻いて目印にし、銀時が二人という妙な雰囲気のまま志士達は宿場へと辿り着いたのだった。
仮銀時は話をつけてくれた高杉を気に入ったのか、高杉が用事をする以外は傍を離れなかった。
銀時の姿とはいえ、素直で大人しく自分に懐く事には高杉も悪い気はしないらしい。
しかし、事は起きた。
それは高杉が水を飲んでいた時、其れを見ていた仮銀時が急に高杉を押し倒して口付けをしたのだ。
「ンッ!?ンー…ン…ッ!!」
必死に高杉の口に吸い付く姿に、銀時がショックを受けている間…桂と黒子野が慌てて引き離した。
敵意があるわけでは無さそうだが、仮銀時はまだ諦めまいと高杉を見ては口許を舐めようとする。
てっきり怒るかと思われた高杉だったが、高杉は仮銀時を見て察した。
「はぁ…はぁ……お前、もしかして…喉渇いてんのか…?」
少し頬を紅くしつつ、高杉が湯飲みを渡すと仮銀時はゴクゴクと飲み干した。
納得した桂と黒子野、仕方なさそうに笑う高杉の何とも言えない微笑ましい雰囲気。
「高杉君、ソイツに優し過ぎやしませんかね。」
銀時が高杉の腕を掴む。
ふと溢れた呟きに、高杉は首を傾げた。
「優しいも何も、コイツは植物だ。完璧に話せる訳じゃねェんだから仕方ねェだろ。」
仮銀時は水を飲み、満足すると高杉の傍らで大人しくしている。
高杉が言うように何かする訳でなく、喉が渇けば高杉に口付けを迫るくらいだ。
高杉が水浴びをしていれば寄っていく辺り植物なんだなと思う…。
「(…んな事関係あるかチキショー!羨まし過ぎるんじゃァァァッ!)」
そんな銀時の気を知る筈もなく、仮銀時は高杉の肌の水滴に唇を寄せたり口付けをしたり…罪無き大胆さである。
遂に銀時が「離れてくんない!」「くっつき過ぎ!」と桂よりも黒子野よりも我先に引き離しに行くが、慣れた高杉は「水だな」「何だ?」と優しくしなさる。
結局、仮銀時は2日ほど銀時の姿をした後に黒子野の姿に代わった。
高杉と黒子野で途中まで見送り、なるべく川沿いの人里へ向かう道を教えてやるとペコリと頭を下げてから歩いて行った。
…………
宿場では銀時が不貞腐れている以外は変わりない。
「何だ銀時、拗ねてんのか。」
割り当てられた部屋で寝そべっている銀時は起きてはいたが寝たふりを続けた。
「せっかく酒でも、と思ったが寝てんじゃ仕方ねェな。」
「…」
微かに湯の香りがした気がしてチラリと盗み見ると、月明かりに照らされた浴衣の高杉が見えた。
「…酒より癒しが欲しいんだけど。」
「はァ、今日も暑かったなァ…。」
「オイ、無視すんじゃねーよ。」
畳に寝転んだ高杉の方に同じく寝転んだまま向きを変えると丁度、高杉が懐に収まった。
「(…なんか、久しぶりかも。)」
紺色の浴衣を着た高杉が銀時を見て、同じ事を思ったのか笑っている。
微かに唇が触れる距離で、そっと腰に回された。
銀時も高杉をそっと抱き締める。
普通なら良い感じの雰囲気でこのまま…な処だが高杉はこれで寝てしまう。
安心するのか落ち着くのか、懐かれてる気がして悪くはないが…………そういう奴だ。
しかし銀時は高杉が寝るのはともかく、浴衣で寝るのをあまり良しとしない。
「お前よぉ…浴衣で寝るの止めてくんない?」
「なんで。」
「なんでって(知ってるくせに…)」
着流しならともかく、生地の緩い浴衣を唯でさえ緩く着る高杉なんて目の毒でしかない。
首筋、項は丸見え。
肩は直ぐに肌蹴、脚も露になる。
そんな姿で当たり前のように懐に来られた日には…此方の身にもなってくれ。
「仕方ねェだろ、着流しだと洗濯面倒だし…浴衣の方が洗うの簡単で直ぐ乾いて楽だ。」
確かにそうだけど。
しっかりした着流しより、綿の乾きやすい安い浴衣の方が物資的にも入手しやすいし寝巻きに適してる。
それでも、猫のように気持ちのまま寝返りする高杉の肌蹴具合は銀時の銀時を刺激する。
しかし高杉も気疲れしたのか、スゥスゥと気持ち良さそうに寝ているのを見ると…
欲の為に起こすのは躊躇われるのだ。
「そのうち御褒美もらうからな。」
小さく呟きつつ、銀時は懐の恋人に自分が腹に掛けていた薄布をかけて眠りについた。
少しして「暑い」と薄布を投げ、肌蹴まくりで寝返る裸同然の高杉を見た時には
今すぐ叩き起こして鳴かせてやろうかと思いました。
あれ?作文?
おしまい
大変お待たせいたしました!
リクエスト有り難うございました!!
フシビ 拝
☆コメント☆
[まなみ] 08-03 18:48 削除
銀時のスネ具合が可愛すぎましたーー!笑笑
高杉が植物銀時に母親のような優しさを見せているのが素敵です!!
でも、本物銀時の前では 少し子供のように甘えて擦り寄るのが最高です!
素敵な小説をありがとうございます(*>ω<*)!!
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