小説 紐八
□寂しがり
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夏休み前のある日。
高杉は一学年上の恋人である銀時の家に泊まっていた。
意外と奥手だったお互い、こうして家に泊まる様になったのは未だ記憶に遠くない。
「銀時、飯食うぞ。」
「おう、サンキュー。」
時刻は夜で有りながら、空は未だ薄い青が延びていて東側のみ黒く染まっている。
そんな空を横に、二人で食事を摂る。
「なぁ高杉、お願いがあんだけど」
「お願い…?」
「夏休み、一週間だけ待っててくんない?」
「…一週間?夏休みに一週間、恋人ほったらかして……まさか浮気かてめェ。」
一気に鋭くなる高杉の視線に銀時は必死に否定した。
「思考回路早ッ!いやいや!確かに夏休みってそういう雰囲気だけど!俺は違うから!合宿だから!」
「…合宿?」
そう呟いた高杉は若干眉間に皺を残したまま銀時を睨む。
「眉間に残るぞ〜可愛いのに、」と銀時は人差し指で恋人の眉間を軽く叩く。
「…合宿って何の。」
「ん?其れがね…剣道部。」
「剣道?部活してないだろ?」
「うん、部活はしてないんだけど一応ヘルプ部員なんだよね。俺はホラ、昔やってたから何か稽古つけてくれって言われてさぁ。」
「其れで合宿行くのか…」
「迷惑な話だけど無下にも出来ないって言うか…断った方が面倒で。」
やれやれと銀時は溜め息をついた。