小説 紐八
□銀時と小太郎
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「おい銀時、クワガタを捕りに行くぞ。」
廊下近くの日溜まりで寝ていた処を起こされ、少し遅れて其の言葉が頭に届く。
眠気眼の未だ霞む目で相手を見れば、桂がいた。
「銀時、ほら、早くせんか。行くぞ。」
「早くって…何で行く事前提になってんの、行くなんて言ってないし嫌だね。」
銀時は大きく伸びをする。
「何だ、クワガタが恐いのか。ならばお前はカブトムシを探すと良い、挟まれないから大丈夫だぞ。」
「何が大丈夫?てか行かないから…眠いし春だしクワガタとか絶対いない。どうせ変な虫が落ちてくるだけだね。」
「そんな事は無い、男子足るものクワガタとか…色々捕れぬ様ではいかんだろう!」
「男子足るもの先ずは其の訳のわからない頭の中の電波をどうにかしたら?この間の変な虫だってかなりのトラウマなんだからな…」
動かない銀時の袖を掴んだまま桂は意気揚々と繰り返す。
「大丈夫だ、今日は裏の小森に行く。」
「余計駄目だろ。大体、春はクワガタもクワガタじゃないし見てもガッカリして終わりだよ、」
「銀時!クワガタが欲しくは無いのか!大体いつもお前は寝てばかりで少しは動かねば」
「わかったよ行くよ!行けば良いんだろ!」
長い説教聞くよりは…と銀時は仕方無く桂に付き合う。
桂は張り切って銀時を連れ出した。