小説 十三
□向日葵の記憶、今此処に
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子供の頃に、銀時から貰った物がある。
一度目は、向日葵の花。
二度目は、向日葵の種。
どちらも暑い、葉月の十日。
俺の誕生日だった。
種を貰った俺は家に植えるつもりだった。
先生に初めて貰った向日葵も庭に咲いているから。
一緒に植えようと考えていた。
しかし奴は…
銀時は、其れでは駄目だと言い出して。
小山の梺に、其処に植えようと言い出した。
『お前ん家に植えたら、俺が見れない。』
『お前が見たいだけか。』
『違いますぅ!オメーが何かアレしたら……俺が変わりに世話するんだよ!』
『………そうか。』
よく解らないが、何となく察して追及はしなかった。
――――――
あれから数年、
あの向日葵は咲いたのかさえ解らないまま戦に出た。
戦に負けてからも行っていない。
暫く近寄りもしなかった、あの場所。
ふと思い立って高杉は船を進めて、今、嘗ての記憶の道を歩いている。
何年ぶりかの故郷は、相変わらず静かなもので…
違うのは人が殆ど居ない事。
あの人も居ない事。
何にしても、今のお尋ね者の身としては人気が無いのは有り難い。