小説 十三
□「気にしてないから」とか言う奴程、根に持っている。
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夕方。
スーパーで買い物をしていた銀八は、ふと目に入った姿に立ち止まる。
酢や醤油等が並ぶコーナーで、夏休み明けから来ると先日に挨拶した高杉が居たからだ。
真剣な眼差しで見つめている先には酢が並んでいる。
いや…実際、醤油を買うのか酢を買うのかは解らないが。
「(何を真剣に見てんだ…?)」
そう思いながら、銀八は自然と反対側に引き返していた。
そして側のお菓子コーナーまできてハタ、と立ち止まる。
「あれ、俺何で引き返した?普通声かけるもんだよな…?」
思わず一人で呟く。
「いや…でも親しい訳じゃないし…」
「でも酷いですよね、夏休み明けたら同じ職場なのに。」
「やっぱり?だよなぁ…声かけとくべきだったよなー…」
「もしかして緊張でもしたんじゃないですか坂田先生。」
「緊張?まさか、そんなガラじゃ………ってか…え?」
自分は誰と話しているんだ、と隣を見た銀八は心臓を跳ね上がらせた。
「た…高杉…先生…いつから其処に…!?」
「さっき、どの酢を買おうか迷ってたら坂田先生が歩いて行ったので。」
「俺に気付いてたんですか…」
「いや、立ち止まってる足が視界に入ったので少し見てみたら坂田先生でした。」