小説 十三

□パワーバランス
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ある日の夕方、銀八は校庭の隅に足を進めた。


「高杉くーん、なんで放送したのに来ないのかね?」


鬼兵隊が溜まり場にしている倉庫を訪ねると高杉は一人、奥のソファに座っていた。


「アンタが俺に用があるんだろ?ならアンタから訪ねて来るべきだろう?」


「何処の何様だコノヤロー、つか一人?」


「風邪が流行っててな。」


「何ソレ…じゃなくて。放送かかったら職員室に来いや馬鹿。此方じゃ俺は教師!お前は生徒!仕従関係もパワーバランスも俺が優先だろーが。」


「いいや、違う。」



高杉はフンと鼻で笑う。


「此の世界でのパワーバランスは…松陽先生>俺、後は其れ以下だ。」


「オメーはホント…どんだけ松陽先生好きなの?つか、此方じゃまだ見てねーけど…先生って何してんの?居んの?」


「はぁ……そんな事も知らずによく生きてられるもんだな銀八ィ…算盤塾を開いてる。」


其処まで答えると高杉は、ソファの背に凭れたまま脚を組み換える。


「で、要件は何だ?」


「え?いや…要件っつーか…授業出ろや。」


銀八は其の辺の椅子に腰掛ける。


「此のままだと夏休み特別課題になるけど?補習とか嫌じゃん、俺は嫌だ。」


「安心しろ、俺が出てねぇのはテメェの授業だけだ。松陽先生が言うから仕方無く他は受けてるが…。」


「え!?そうなの!?」
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