小説 集似

□参る
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皐月も終わる雨上がりの夕方。


江戸を離れた田舎の細道で、花を持った銀時は足を止めた。


そして、向から此方を振り向いた相手も其のまま動かなくなってしまった。


ただ、線香の匂いが煙と共に立ち上がっていた。


『…何で此処に…』なんて在り来たりな事は、互いに口にはしない。


一人は江戸からの旅行者、一人は袂を別ったテロリスト。


紅桜の一件、銀時自身にも纏わるべき由縁の一件、バーチャル双六内での一件で遭遇した高杉。


探したって見付からない相手と、こんな江戸でさえない田舎の細道で鉢合わせるとは思いもしなかった。


高杉の傍らには墓が一つ。


「(よりによってこんな場所で…)」銀時は頭を掻いた。


しかし、此処だからこそ互いが居てもおかしくは無い。


銀時や高杉が共に過ごした場所、先生の墓。


高杉にとっての世界への憎しみの源。


銀時が様々な想いを巡らせていた時、ふと気配を感じた。


相手が高杉である為に「しまった」と一瞬息を呑んだが、其れは銀時の横を通り過ぎるだけだった。


殺気も何も無い静かな感覚は、何とも言い難いものだ。


「珍しく、」銀時はそう口にしてハッとした。
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