小説 充

□雪の中
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「お、雪降りだした。」


夜、万事屋への道中で銀時は空を見上げた。


その隣を歩く高杉は小さく舌打ちした。


「だから早くしろって言っただろうが。屋台なんぞに寄りやがって…」


「だっておでん美味そうだったからさー。」


銀時はサクサクと歩く。


高杉も其の後に続くが、雪は次第に強くなり隻眼では幾分歩きにくい。


風に舞う雪を見ていると目眩がしている気さえした。


「高杉、ホレ。」


「あ?」


ふと銀時を見れば手を出している。


「歩き辛いだろ、手引いてやるよ。」


「…………」


「嫌そうな顔しない。さっさと行かなきゃ、もたもたして真撰組なんかと出くわしても面倒だろ?」


「テメェのせいだろうが。」


高杉は銀時の手に自分の手を重ねた。


「ひやっこい手だなー、コレだからボンボンは。」


「テメェの方が冷てェだろうが。」


銀時に手を引かれながら雪の中を歩く。


「こりゃ、積もるかな。」


銀時が空を見る。


「…ボタン雪だからな。」


ふと銀時が高杉の手を引き寄せ、自然と距離が無くなる。


「…何だ?」


「ん?手、冷たいなと思ってさ。」


銀時は高杉の手にそっと口付けた。


「おい、道ん中だぞテメェ。」


「誰も見てねーよ。」


帰ったら、ちゃんと温めてやるから。


銀時はそう言って、再び高杉の手を引いて歩いた。


二人で歩く雪の中、ほんの少し温りが沁みた。





終わり


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