小説 充

□会話はいつだってちょっとした勝負
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「肉球のチョコレートと云うものは無いのだろうか。」


真面目な顔でそんな馬鹿な事を言うのはコイツくらいのもんだろう。


高杉は溜め息と共に紫煙を吐き出した。


「こんなに素晴らしく愛らしい肉球というモチーフが存在していると云うのに、バレンタインチョコレートはハァトだの四角だの…肉球で良いではないかハァトよりも愛らしく可愛らしいあの形…なあ高杉。」


「…気に入らねェなら作っちまえば良いじゃねェか…肉球のチョコレートとやらを…。」


一々返すのも面倒で、口に出したつもりは無かったのだが気付いた時には桂が期待の眼差しを此方に向けていた。


俺の口は喋ったらしい。


「高杉…貴様…貴様と云う奴は!!肉球のチョコレートが作れるのか!」


「誰が作るかよ、テメェで作れって意味だ。」


そもそも肉球の型なんざ無いだろうからチョコペンで地道に作業するかガナッシュだか何だか造形的な作業でしか作れまい。


至極面倒くさい。


今度こそ心に留めた高杉は燻らせ終えた煙管をしまった。


「やりたきゃ精々頑張んな、じゃぁな。」



「待たんか高杉!貴様は俺を期待させておいて見捨てる気か!貴様が居ないでどうやって作るのだ!?」
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