小説 充

□バレンタイン2013
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「さて…毎年毎年どうしたもんかねェ…」


高杉は船内に在る厨房に一人佇んでいた。


流石に原作とは違う此方の空間にも慣れた高杉は2月14日が何の日か知っている。


思いの外、設定を気にしなくても何とかなる此方の空間はイベント的な意味では便利だ。


高杉は手元の本を眺める。


生チョコだのトリュフだのショコラだの何から何まで幅広いお菓子の本。


「チョコレートじゃなきゃダメなのかねェ…」


気分的にマドレーヌだとかフィナンシェなどを焼いてみたい高杉はどうしても焼き菓子のページに目がいく。


「…まどろっこしいのは辞めるか。溶かして型に流せば良いじゃねェか。その後に焼き菓子を…」


「そんな適当な事したら俺泣くからね。」


「…」


隣を見ればいつの間にか銀時が居た。


「なっ…何してんだテメェ!」


「晋ちゃんね、確かに溶かしただけでチョコは美味だよ?お菓子界の革命者だよ?でも、バレンタインに作るならやっぱり愛情を込めてくれないと。」


「…愛情ねェ…お前、俺が本当に適当に作ると思ってんのか?こんな分厚い菓子の本まで買ってんのに。」


高杉は銀時を見つめる。


「…テメェを想うから、こんな所で本眺める羽目になってんだよ…そんな事も解らねェのか?」
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