小説 充

□恋人未満
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朝日が東の山を染め始めた頃。


各々が雑魚寝をしている中、一人分の足音が一室に向かっていた。


足音の主はスラリと障子を開け、小さな部屋で一人寝ている銀髪に近付く。


そして囁いた。



「銀時くーん、朝ですよー」


心地の良い低めの声がそっと告げると銀時と呼ばれる銀髪は小さく唸る。


「…」


囁いた方は仕方なさそうに溜め息をつくと、目を猫の様に細めた。


何かを企む様な笑みを浮かべて。


「銀時くーん、こんな時間まで寝てて朝飯当番は大丈夫なのかなー…」



「!」



カッと銀時が目を開けたのと先程から囁き続けていた男が刀を抜いたのは同時だった。


「しまった当番…ギャァァァァァ!!!」


咄嗟の反応でどうにか太刀を避けた銀時はキッと相手を睨んだ。


「何すんだ高杉ィィッ!!」


「何じゃねェ、テメェこんな時間まで寝過ごしやがって朝飯当番だろーが。起こしてやったんだ、感謝しろ感謝。」


高杉はフンと鼻で笑うと刀をしまう。



「起こすどころか危うく永遠に目覚めなくなるとこだっただろーが!」


「最初は優しく囁いてやったんだぜ?で、起きなかったから仕方無く『もう殺すギリギリでやるしかねェな』って。」



「選択肢が極端だなオイ…てか、お前は何で起きてんの?」





「コイツの手入れをしてた…怠ると鈍るからな。」


高杉は刀を見せる。


「つーか腹減った、さっさとやれよ当番。」


「あ、そうだった。つかオメー早起きしたならやっといてくれても良いじゃん…おい、釜戸いくぞ。何座ってんだ。」


「馬鹿か、何で俺がテメェに付き合わなきゃならねェんだ。俺は休憩するから頑張れ当番。」


「…ちょっと手伝ってくんない?暇だろーが。」


「んなわけねェだろ、俺は休憩するって言ってんだろ。」


嫌がる高杉を連れて銀時は釜戸に急ぐ。



すると、米を炊く釜には既に炊けた米が仕上がっていた。



「アレ?」



銀時は高杉を見るが高杉はさっさと葉物を切り始めていた。


「高杉、飯……」


「こんな時間じゃ炊いても間に合わねェだろ?だから米だけは先に炊いといた。今度は寝過ごすなよ。」



「もー!高杉くんたらツンデレか?ツンデレなのか?助かったありがとー」


「良いからさっさと用意しろよ。」



戦ってばかりの毎日だけど、こうして笑えるなら…



「高杉、ありがとな。」



幸せだ。




おわり
 

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