小説 八
□俺は解ります
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俺の名前は三郎。
平賀三郎。
親父は江戸一番のカラクリ技師。
攘夷戦争が勃発して暫く、俺は今、江戸を離れた此処に居る。
ま、戦争をしに来たんじゃあない。
ちょいと親子喧嘩でね。
そんな俺が所属してるのは『鬼兵隊』っていう義勇軍。
お侍が刀振り回すこんな騒ぎだが、まあ人不足もあるさ。
国一体となって天人を廃する今の時代。
其れにしたって、やっぱ俺みたいな一般の出で剣なんざからっきしな奴はお侍さんと肩並べてってのも居心地悪くて。
気位高い奴等もいるし、身内でのいざこざも御免こうむるね。
けど、俺がいるこの鬼兵隊は侍じゃ無い奴が多い。
剣もそこそこな奴等が沢山いる。
其れでも良いってんで、俺も試しに言ってみたら何ともまあ入れたわけで。
そうして、この人。
高杉晋助、総督の元で御世話になってるわけで。
『しっかしてめェは本当に剣からっきしだなァ。』
入隊したある日、総督は稽古する俺を見て笑った。
『だから…剣は出来ないって言ったじゃないですか。』
『ククッ…まあ、向き不向きってのは有るもんさ。此処に居る奴等は農家の出も多くてね。農具は武器に扱いが似ている、って聞いた事ねェか?』
『さあ…なんせ俺は機械ばっか弄くってたガキなもんで。』
『フン…なぁ、コレ解るか。』
総督に見せられたのは武器は武器でも銃。
『数は少ねェが、コイツをもう少し活かしてェ。』
ソイツは俺の得意な分野で、始めこそ頭を捻ったが勝手が解れば入り込んでいった。
幾つか試行錯誤した物をあの人へ見せれば、其れから俺の担当は機械になった。
同じ処に居る連中も聞けば俺と同じく、剣の出来ない輩であの人に声をかけられたらしい。