小説 柔録
□2月14日の蜂蜜
1ページ/6ページ
バレンタイン。
学生等がキャッキャウフフする文化祭と修学旅行に次ぐくらいのイベントだ。
いつもなら学生等がくれる甘味で満足するが、今年の銀八は違う。
落ち着かない。
何故なら元生徒で現在の銀魂高校保険医、愛しの恋人高杉から何も貰っていないからだ。
同居しているのに今朝も普通に、一緒に出勤しただけだ。
「(大丈夫だよな?まだ2月14日は始まったばっかだし…)」
時計は12時半。
「(然り気無く昨日はバレンタインの話もしたし…ぬかりは無い筈だ。偶々朝は忘れてたか帰ってからくれるとかだよな…?)」
授業の合間に試しにメールで『チョコ貰った?』などと聞いてみたが『貰った』としっかり返ってきたチキショーコノヤロー。
銀八はどうにか心を落ち着かせながら授業に向かう。
心半分此処に有らずのまま、あっと言う間に夕方だ。
「(はー…一日半分以上終わったぞ高杉ィ…帰ったらくれるんだろうな?頼むよマジで。)」
「坂田先生?」
帰り支度を済ませた高杉が職員室で呆けている銀八を覗き込む。
「ハッ…高杉、先生!?」
「…何だ?」
キョトンとしている高杉に銀八は「ぁ…いや、」と誤魔化す。