小説 漆
□甘色の戀に浸るか空蝉よ
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トン トン
朝、まだ夜が開けて間もない頃。
銀時は戸を叩く音で眼を醒ました。
トン トン
「んだよ…こんな朝っぱらから………常識考えろ馬鹿野郎…」
トン トン
トン トン
「10時になってから出直して来い…俺は寝る。」
銀時は布団の中で寝返りをうった。
その時、
「くぉら銀時ィィィィィィッ!!!お客さんだよさっさと起きなぁァァァァッ!!!!!!」
ガンガンと戸を壊さんかりの勢いで叩くのは声からしてお登勢だ。
銀時の低血圧が一気に急上昇した。
「ウッセェッ!クソババァァァァァッ!!今何時だと思ってンだァァァァッ!!」
「喧しいわ能無し天然パーマがァァァァッ!お客様が来たら例え柱に股間ぶつけててもお出迎えしなァァァァッ!!!」
「テメッ!男が股間ぶつける事がどんな状況か解って言ってんのかクソババァ!!痛いじゃ済まねーんだぞ!?デッド・オア・アライブ処か即座にデッド・デッド>アライブなんだからな!!!」
「フン。上等じゃないかィ、どうせ使い道無いんだ。売らないならぶつけても支障ないだろ。ほら、さっさとお客様おもてなししな!」
散々、言うだけ言ってお登勢は店へと降りて行った。
「ったくあのババァ…あのね、お宅さんも!人ん家訪ねる時は電話してからか責めて10時過ぎてから!これ常識!」
「うるせェな、腐れ天パ。10時まで待てる用ならハナから此処には来ねェよ。さっさと中入れろや。」
「……………………。」
銀時は来客らしき女を見る。
長めの黒髪に、切り揃った前髪。
左目に眼帯をした切れ長の眼をした女だ。
声も女だ。
しかし…
「あの、初対面にしては随分な言い方じゃね?しかも何て口の悪い…」
「余計なお世話だ。其に初対面じゃねェよ、銀時。」
女はフンと鼻で笑うと中へと上がった。