小説 漆

□寝ても覚めても
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一瞬で、何かが止まった気がした。


戦に出て、やっと取り戻したのは…先生じゃなくて、先生の『首』。


「……」


銀時はふと眼を醒ました。


辺りはまだ暗い。


時計を見れば夜中の3時半。


「めんどくせ…」


呟きながら銀時は寝返りをうつ。


隣には高杉がいて、表情は見えないがよく眠っている様だった。


先生や戦の夢はよく見る。


『あの時』の夢もそう…

夢でも現でも誰も何も言わなかったし、何も言えなかった。


声が出ないまま、心だけが叫んでいた。


そんな昔の夢は多分ヅラも、そしてコイツも見ていると思う。


そんな事を考えていた時、高杉が何かを言った。


「?」


「…え…せ……ん…せ…を…かえ……せ……」


夜更けの闇に聴こえたのは、ほんの微かな声。


銀時は身体を起こして隣を見る。


「(…見てんだ…。)」


高杉は譫言を溢す。



「返…せ…先、生……を…返せ…返せ…」


さ迷う手を銀時は眺めた後で掴まえた。


「(…返せって言ったって…居ねーもん、先生…。)」


口に出さないまま、銀時は高杉の涙を拭った。


すると高杉の眼が開いた。


「おはよ、まだ3時半だけど。」


変わらない調子で言うと高杉はゆっくりと息をつく。


また一つ涙が溢れた。


「嫌な夢でも見た?」



銀時は高杉の目元に口付ける。


「…何だ…?」



「んー?美味そうな水が有ったからさ、ちょっとしょっぱかったけど。」

笑いながら今度は唇を重ねる。



「…嫌な夢、俺も見たよ。」



「…」



「寝てても起きてても、見るもんは見るからさ…その、泣くんじゃねーよ。」



「…泣いてねェよ、泣くなんて真似…俺がするかよ。」



高杉はそう口にして銀時の胸元に顔を埋めた。



銀時も高杉を抱きしめた。
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