小説 集似
□参る
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「…」
「…」
互いに言葉もなく。
高杉は花を生け、銀時は其れを見ていた。
黙って花を生けて整える高杉の後ろ姿は、戦で死んだ仲間を埋めていた時の姿によく似ていた。
高杉は懐から線香を取り出して火を付けると、銀時に差し出した。
「俺はもうやった。」
「え…あ、どうも…。」
銀時が線香を受け取ると、高杉は今度こそ立ち去って行った。
銀時は其れを静かに見送ると、貰った線香を捧げた。
「(墓参りに来ただけか…つか、ちゃんと来てたんだな…。)」
吉田氏とだけ刻まれている比較的新しい墓標を銀時は見つめた。
其れは戦も終わりかけになって、国が許可して、漸く造られたものだ。
「…アイツ未だにやんちゃなんだけど、先生どうにかしてくんない?」
銀時が墓を眺めながら呟くと、何か物音がした気がした。石臼の様な石同士が擦れた音だ。
「…え?」
銀時は少し身体を震わせた。
そして、若干開いている墓石の石戸を見付けた。
「…いや、まさかね…いやいや、多分高杉が開けたんだろ。ちゃんと閉めろよなー……」
恐る恐る其処を閉めようとしたが中々閉まらない。
銀時は仕方無く一度其処を開いてみた。
すると其処はスッと開き、中には陶器性の容器があった。