小説 集似
□参る
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ザリッと草履が土を掠める音が止まる。
高杉が足を止めたのだろう。
しかし、銀時は「珍しく、」の後を考えていなかった。
そもそも其れ自体が銀時の無意識で出た言葉だったのだ。
「(何をしてんだ俺ェェェッ!よりによってクソ面倒臭い奴を引き止めちまったよ!?珍しく!?珍しくって何!?何を言うつもりだったんだ俺!?)」
銀時は一人焦っていた。いっそ何も言ってない事にすれば…などとも考えていた。
「おい…『珍しく、』何だ?」
当たり前だが足を止めていた高杉が尋ねてきた。
「(おいおい話し掛けられちまったよ…逃げ切れねーよコレ…つか何でコイツも足止めちゃったんだよ、無視して歩いて行けば良かったのに!)」
明らかに自分が呼び止めておいて銀時はそんな事を思っていた。
意を決して銀時は高杉を見ると、不審な眼で見られていた。
「(お尋ね者に不審がられるって何?)」
銀時はひとつ息をして、口を開く。
「あのー…珍しく、ってのは独り言だから。気にしないで良いから、何でもないんで。」
無茶苦茶な言い訳をする銀時に、高杉は明らかに『?』を浮かべていた。
しかしふと足を戻して銀時の持っていた花を取り、墓の花瓶に生け始めた。