小説 充
□バレンタイン2013
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「ウボルアァァ!!ツンデレギャップ!」
銀時は勢い余って冷蔵庫の扉に頭を強打した。
高杉は内心『これで銀時は静かになったな』と密かに思いながら本を見る。
確かに、ただ溶かして型に流すだけのチョコなど簡易だ。
しかし、高杉とて銀時には情がある。
だからこそ今まで最も簡易な方法の型流しは思い付いてもやらなかった。
どうせなら、少しは驚かせたい。
笑わせたい。
そう想うのが恋人ではなかろうか…と高杉は後頭部をぶつけた銀時を眺めながら悟りを開きかけていた。
しかし、焼き菓子が焼きたい。
焼き菓子じゃ駄目なのか…
そんな思いが募る
何故そんなに焼き菓子に拘るのか自分にも解らないが設定のテロリスト的性なのかも知れないし違うのかも知れない。
果てしなくどうでもよくなった高杉は取りあえず聞いてみた。
「なあ銀時よ、チョコレートじゃなきゃ駄目か?」
「焼き菓子?ケーキとか?」
「いや、マドレーヌとかフィナンシェとか。妥協案は…マフィンだな。」
「そこまで決まってんの?てかチョイスが独特だよね。俺はお前がくれるなら何でも良いんだけど…細かい事を云えばチョコが良いかな。」
意味ありげに口にする銀時を高杉は見逃さなかった。
「意味有り気だな。」
「気になる?」
「…理由があるなら聞いても良いぜ。」
「まあ理由ていうか…早い話、チョコレートは本命なわけよ。俺も良い歳して細かい事まで言いたくはねーんだけどよ…やっぱ、知ってたら欲しくなるっていうか…」
「チョコレートが本命か…そんな決まりがあったんだな、知らなかったぜ。」
「え?じゃあ今までのチョコの意味は…?」
「……気持ちだろう。」
「だろうって、お前…まあ気持ちなら良いか。」
「しかし、知った以上は焼き菓子じゃ駄目だな。」
「あれ?納得してくれんの?」