小説 語

□心に名残の雪
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ふと思い出した昔の事。

『あー!!銀時!盗み食いするといけないんだぞ!』


『盗み食いなんかしてないもんね、コレ毒見。』

ある雪の日、桂と高杉との三人でお使いに行った帰り。


銀時は干し柿を、桂は魚を、高杉は何か草みたいな野菜を持っていた。


止まない雪道を歩きながら休憩しながら。


包んで持った握り飯を食べ、手荷物の干し柿をつまむ銀時を桂が叱る。


『ちゃんと握り飯を食え!お前は甘いのばっかり食べてるといつか甘い…あの、アレ!甘い何かになるからな!知らないぞ俺は!』


『知りませーん、聞こえませーん。』


そんな俺と桂の騒ぎを何食わぬ顔で聞いていた高杉。



何気なく思い出した記憶に、嫌な気はしなかった。



銀時は外に舞う雪を眺める。


雪は無造作に、江戸の空を吹き乱れている。


深々と舞い降る雪は、ずっと消えない心の記憶。


心に積もる名残雪。


そんな時、玄関では神楽が持ち帰った雪玉をぶつけられる新八の悲鳴が響いていた。






おわり
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