小説 語
□ホワイトデーとは。
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一通りのやり取りが勝手に始まって勝手に終わった辺りで銀八は近藤の席を見る。
「何やってんだ高杉。」
銀八と新八のやり取りの間のもう一つの注目は其れだった。
近藤の席、其処には机に白い花瓶を置いて手を合わせる学校一の不良と言われる高杉がいた。
「近藤が死んだんだろ?取り敢えず花瓶だけでも置いといてやらねぇとな。花は明日買ってくる、成仏しろよ近藤。」
「その優しさを先生にくれない?つーかお前アレだよね。ホントに素晴らしいくらい生粋の天然だよね。そーゆうとこがもう何かね、堪んない。」
銀八の言葉にハッとした高杉は銀八を見る。
「…まさかテメェ…近藤が死んだってのは…」
先程の発言で高杉は気付いた。
そう。
今のうちに言っておくと、高杉は馬鹿な訳ではないのだ。
『天然』なだけで。
もう一度言う。
『馬鹿』ではない。
『天然』なのだ。
流石に『記念物』まではつかないが、とにかくそういう事なのだ。
その時、教室の扉がガラリと開いた。
「すみません先生!ちょっと女神に声かけたら一時的に意識不明になって遅刻しました!」
近藤はそう言いながらハッハッハと笑った後、訳も解らぬまま高杉の平手をくらって再び教卓の横で意識不明になった。
そして、無言で立ち上がったタマの手によって近藤は窓に干されたのだ。
風に吹かれながら陽射しに照らされる近藤は、洗濯物の様だった。