小説 紐八
□純粋な妬きもちだがね!
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二日空けただけなのに、待ち遠しい我が家が見えると気持ちが高揚して仕方がない。
後部座席から車を降り、一目家を見上げる男は…
見た目からして溢れんばかりの高貴さ、気高さを持ち、如何にも『頭のキレる男』『金持ち』そんな印象の似合う男だった。
男の名は伊藤鴨太郎。
生まれた家は裕福だったが、病弱な兄に実の親は奪われ…
努力は報われず、愛情等にも程遠く育ってきた。
其れ故に、鴨太郎は孤独ながらも成績優秀容姿端麗。
社会に出てからも其の頭脳と才能で自らの道を切り開いてきた。
この世で信用してはならないのは他人、
信用して良いのは自分と権力と金、
買ってはならないのは女と恨み、
借りてはならないのは正に借りと金、
見せてはならないのは本心、
そして、
忘れてならないのは此の自らへの決まりと大好物のチョコレートだ。
鴨太郎は其れを忠実に守ってきた。
自立してからは使用人・運転手に言葉や挨拶を忘れず、他人には漬け込まれぬよう愛想笑いの下で頭をフル回転させていた。