その他

砂糖<君
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プレーン、ジャム、シュガー、チョコ…


いろんな種類のクッキーがいっぱい。


それは母の友人が我が家を訪れた際に持ってきてくれたものだった。



『あ〜…美味しい』


私は間の抜けた声を出してはゴロゴロゴロゴロ…



「何食ってんだよ?」

『クッキーだっ…よ…』

「よっ」

『なんでタミヤっ!?』

「回覧板渡しに来たらおばちゃんがどうぞってね」



自然すぎる存在感に逆に違和感を覚えてしまった勢い。お母さんめ、コイツなら家に上げても大丈夫とか思っちゃ駄目だよ。

タミヤの視線がクッキー缶に移る。なんてこった。本当にタイミング悪すぎだ。育ち盛りの男子中学生なんかに稀少なクッキーなんぞ与えられるものか。与えてみろ、きっと缶ごと食われてしまう。


「もらいっ!」

『あっ…!!』

「んっ、ウマイなーコレ!!」

『…っ!』


かといってデブ食いしてるように見えるのも嫌なので止めるわけにもいかず。


「これもウマイ」

『ちょちょっとっ…!!』

「なんだよ?」

『もう少し味わって食べてよ!!』

私のクッキーなんだからと内心叫ぶ。


「うまーい」

『ぁ、…っ、ぁあ!』


ほいほいほいほいタミヤの口にクッキーが消えていく。
ジャムゾーンのクッキーは絶滅。
くそう、お気に入りだったのに。
ならばせめて一番無難に美味しいプレーンだけでも食べ


『あぁっ!!』

「なっ、何なんだよさっきから…」

偉いこっちゃ…!!プレーンは…OHー…信じられない。底をついている。


『それ最後の奴!!』

「だから何だよ?」

『頂戴』

「そんなの早い者勝ちだろ?」

『私も食べたい!!』

「俺も食べたい」

『私のクッキー!』

「でも俺が来たから俺のクッキー」

『ムッ…』


腹が立ったのでタミヤの持つクッキーに手を伸ばした。だがしかし軽やかに交わされる。素早い攻撃力を与えても何のその。座っても立ってもタミヤは私よりデカイ。あと少しなのにクッキーは必ずと言って取れない。



「ムッ!」

『あ゛ぁ゛あぁ゛ーーーっ!!!!!!』


そして恐れていた事態が発生。

ついにタミヤが私の隙を突いてクッキーを口にくわえてしまったのだ。
極めつけは歯でくわえたクッキーを器用に上下に動かして満面の笑み。


嫌がらせか?そうなのか?人が悲しんでるのを見てそんなに楽しいのか?タミヤ…君はそんな男だったのかい…?

彼は奪ったクッキーをなかなか食べない。ニヤニヤしてこちらを見ていたのに急に半ば真顔で見てくるようになったのでなんだか怖い。



『食べるならさっさと食べちゃってよ…』

「……」




……無視ですか


ああそうですかと諦めて私は別のクッキーを選ぼうとした。


『わっ!?』


なのに徐に顔を近づけてきたものだから思わず後退り。




「ン…」

『どうも…』

「ムゥッ!!」

『ぇええぇえなにっ…!?』



もうよくわからない。半分くれるのかと思って手でクッキーに触れようとしたら眉間に皺を寄せ物凄い形相で見られてそっぽを向かれてしまった。

そして手を引っ込めるとまた近づいてきた。



「ンッ!」

『ぇ?、…タミっ…え』


じりじりと迫られているのに私の身体は上手く動いてくれない。

くい、とくわえたクッキーを彼は差し出す。

紛れもなくそれは口で食えと指図しているようだった。





「……ん」


『…っ!!』







思考回路がメチャクチャになりながらも、ちょっとでも食べなければ状況は変わらないと感じ取った私は恐る恐るクッキーに顔を近づけた。


カリッ…


ギリギリ端を噛む。指図通り食べたのにタミヤは離れてくれない。離れるどころか寧ろクッキーを押し付けてくる。閉じられた歯列にクッキーが当たる。

これ以上食べ続けたらいつ彼の口にぶつかってしまうかわからない。

でもこの超至近距離を続かせたくもない。第一私の気が持たない。ああ逸そ気絶していまいたい。

そうこう考えている間にも彼はクッキーを押し付ける。意思とは無関係に私の歯は少しずつクッキーをかじる。

カリ……カリッ……

ゆっくりゆっくり、また一口。

カリッ…

かじる音は彼との接触までのリミット音。

『……』

吐息が掛かる。さっきよりもずっと至近距離で。


『……っ』

「………」



馬鹿でもわかる。

もうこれ以上は無理。

これ以上は……


「…ン」

『……っ』

「ッ…」

『ンッ!?』


…ふにっ、と柔らかな感触が口先に触れた。




「お前食うの遅すぎ。顎痛ぇ…」


『ムッ!?』


クッキーは私がくわえたままでタミヤは離れてる。


最後の一口は痺れを切らしたタミヤがズラしてきたのだ。

光景がフラッシュバックしてきて私は羞恥に悶える。



『ンーー…!!』

「取ったからには最後まで食えよな」



吐き出すわけにもいかず、もぐもぐと食べ進めていくと彼がくわえ続けていたであろう箇所が少し湿っていた。

あー恥ずかしい。

強引に一呑みする。





「……美味かった?」



『……美味しかったよ』



意味不明。どうしてしでかした本人が真っ赤なの?


でも本人がそうだとしたら私はもっと赤いんだろうな






==砂糖<君==




「俺もうまかった」

『…変態』



気恥ずかしさからの沈黙は心地好く、初めてのキスは想像以上に甘かった




☆おしまい☆

この二人まさかの実は付き合ってません設定。


タミヤみたいな奴は恋が芽生えたら凶器です。顔面凶器です。ある意味。イケメン過ぎてなっ!!←

☆様名前変換少なくて申し訳ありません!読んでいただきありがとうございました!!

てぃ〜にゃ(^3^)/



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