その他

I-LOVE-YOU
1ページ/1ページ




それはずっと昔の幼い頃の記憶。



「おれ、☆がお嫁さんじゃなきゃヤだからな!」


『よりとくん、へんなかおー…』


「わかったな!?」


『うんっ!☆もよりとくんの「☆がお嫁さんじゃなきゃヤだからなっ!!」


『☆も「☆がいいっ!!」

『より「☆はおれのお嫁さんだからな!!」

『よ「☆はおれのお嫁さんになるんだっ!!」


『きいてよぉおおぉぉおぉっ!!!!』



でも今ならはっきりと鮮明に思い出せる。



それはずっと昔の幼い頃の記憶




『ねぇ、頼人…どう思う?』

「どうって…何がだよ…」

『だからぁ…』


帰り道、夕陽に照らされた土手には二人の人影の姿があった。

彼は自転車を押しながら。彼女は彼の自転車籠に荷物を預けて帰路を辿っていた。

時は移り変わり今や二人は高校三年生、秋。相変わらず仲は良くて互いに悩みを打ち明けたり関係は親友級だった。



『…あの人と付き合ってみるべきかどうか』


「あぁ…」

『頼人あの人とよく絡んでるじゃん』


ついに私に訪れた春。相手はサッカー部でイケメンで頭もそこそこ。でも特にこれといって親しいわけでもなかったので早速頼人に相談してみた。



「☆はアイツのことどう思ってるの?」


『えー…』


流石は長年一緒に居るだけあって鋭く核心を突かれた。


そう、そこが一番悩んでる場所。


『…かっこいいとは思うけど、……好きではないかも』


「はぁ?なにそれ」


『だからどうしたらいいかわからないんだってば!』


好きではないけど訪れた春を無駄にはしたくない。況してやイケメン特典付きなのだからより慎重にいかねばならない状況にあった。


付き合ってみたいけど好きじゃない的な…でも彼氏欲しい的な…



「お前どうせ俺が何言っても『でも』ってなるんだろ?」


『……それは…』



…仰る通りで。私は彼に背中を押してもらいたかった。
ただ一言「付き合ってみれば?」と。


言い返せなくなって黙り込むと頼人は小さな溜め息を勢いよく吐いた。



「俺は付き合わない方がいいと思うよ」


彼の口から発せられたのは私が望んでいなかった言葉だった。



「好きでもないのに付き合うとか相手に失礼だろ」


『……もしかしたらちょっとずつ好きになってくかもしれないよ?』


「好きになりきらない間にキスとかそれ以上のこと要求されたらどうすんだよ?」


『…っ』



確かにそれは考えてなかったな…。



『あぁーーでもいいっ!!スッキリしたっっ!!私付き合うっ!!』

「お前っ…人の話…」

『ごめん頼人っ!!自己完結させるっ!!』

「そうじゃなくて…っ」

『携番教えてもらってたから今から返事したいんだけど、頼人一緒にいてくれない?』

「聞けよっ!!!!」

『っ…!!』


まさか叫ばれると思っていなかったので身体がオーバーに跳ねる。

カラカラ鳴っていた自転車の車輪の音が止まり、秋風が頬を掠める。

そして二人は異様な静寂な雰囲気に包まれた。







「…付き合うなよ」


豹変した彼の雰囲気と表情は険しく私は気圧される。


『……ごめん。……でも、そんなに付き合っちゃいけない理由でもあるの…?』


「………」


結論出てる前提で相談してしまったのは悪かったと思うけど、ここまで怒らなくてもいいと思う。


彼の表情からは上手く感情が読み取れない。黙ったままで、怒ってるような悲しんでるような…でもどこか見覚えがあるような…。








「俺が好きなんだよ…」


---☆のこと…


それは静寂と沈黙をより一層深めるには十分すぎる発言だった。



「……悔しいけど☆が好きなら諦めようと思ったよ…。でもそうでもない奴と付き合う姿なんか…見てられねぇよ…」


呆然としながらも少しずつ状況を理解していく私の頭。これはきっと冗談とか悪ふざけじゃないんだ。



「覚えてるかどうかはしらないけどさ……」




「俺…☆じゃなきゃ嫌だから…」


『…!』




突如目の前にいる頼人に、ずっと幼い頃の彼の姿が重なった。

懐かしい。そうだ…あの時もこんな風に変な顔してた…


はっきりと鮮明に思い出されたはあの光景。


無邪気で互いに好意を抱いてずっと一緒に居られると心の底から信じていたあの頃。




「だから付き合わないで……」






===1-4-3===



言葉より先に私は頷いていた。





☆おしまい☆


嫉妬しちゃう永井くんを書いてみたかったてぃ〜にゃでした。

☆様ここまで読んでいただきありがとうございました!!(^3^)/



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ