過去作品2

□Plnto
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「この左手は、もうお前の知っている優しい手じゃない」

 そう言ってアースは、私の手を静かに"右手"で振り払った。その払った手は痛みを感じなかった。私はアースの優しさが伝わってきた。

「俺の左手は、もう真っ赤だ」

 私から決して視線を外すわけでもなく、アースの曇った目は私を朧げに映していた。その目の奥には、私の背後でゆらゆらと不規則に揺らぐ、木の枝が映っていた。
 私は、こんな目をしたアースをもう何回も見てきた。数え切れないくらい。マクモもきっと、私と同じ気持ちになったに違いない。

 私も最初はそうだった。
 アースの曇った目を見るのは、とても辛かった。アースの左手に触れられないのが、悲しかった。何よりアースの近くにいながら、アースを救えなかった私に対して、苛立ちを覚える。
 でも、今はもう大丈夫。…私は相変わらず、不甲斐ない気持ちでいっぱいになる。でもアースが大好きだから。
 それが、私の中で唯一の真実。

「……、」

「えっ」
 
 ふとアースが右手を広げて、私を体に引き寄せた。心拍数が上昇して、顔いっぱいに熱が込みがってきた。そんな私の肩に頭を乗せ、右手を背中に回してきた。

「俺は、」

消えない。

「だって、俺は…」

 アースが言葉を綴るのを止めた。正確に言えば、アースはきっと言葉を続けることをためらったと思う。私は、アースに頼られていることが嬉しくて、アースの背中に両手を添えて、「喋らなくていいよ。」と呟いた。

「言いたくないなら、言わないでいいよ。私、アースがその言葉の続き言うの、ずっと待ってるから」

 涙が少しずつこぼれてきたのと、アースがあれほど触らせるのを拒んだ左手が、私の背中に回して、さっきまでの力とは比にならないくらい、力いっぱい抱きしめてくれた。




Plnto
(冥王星)





 

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