過去作品2
□Plnto
1ページ/1ページ
「この左手は、もうお前の知っている優しい手じゃない」
そう言ってアースは、私の手を静かに"右手"で振り払った。その払った手は痛みを感じなかった。私はアースの優しさが伝わってきた。
「俺の左手は、もう真っ赤だ」
私から決して視線を外すわけでもなく、アースの曇った目は私を朧げに映していた。その目の奥には、私の背後でゆらゆらと不規則に揺らぐ、木の枝が映っていた。
私は、こんな目をしたアースをもう何回も見てきた。数え切れないくらい。マクモもきっと、私と同じ気持ちになったに違いない。
私も最初はそうだった。
アースの曇った目を見るのは、とても辛かった。アースの左手に触れられないのが、悲しかった。何よりアースの近くにいながら、アースを救えなかった私に対して、苛立ちを覚える。
でも、今はもう大丈夫。…私は相変わらず、不甲斐ない気持ちでいっぱいになる。でもアースが大好きだから。
それが、私の中で唯一の真実。
「……、」
「えっ」
ふとアースが右手を広げて、私を体に引き寄せた。心拍数が上昇して、顔いっぱいに熱が込みがってきた。そんな私の肩に頭を乗せ、右手を背中に回してきた。
「俺は、」
消えない。
「だって、俺は…」
アースが言葉を綴るのを止めた。正確に言えば、アースはきっと言葉を続けることをためらったと思う。私は、アースに頼られていることが嬉しくて、アースの背中に両手を添えて、「喋らなくていいよ。」と呟いた。
「言いたくないなら、言わないでいいよ。私、アースがその言葉の続き言うの、ずっと待ってるから」
涙が少しずつこぼれてきたのと、アースがあれほど触らせるのを拒んだ左手が、私の背中に回して、さっきまでの力とは比にならないくらい、力いっぱい抱きしめてくれた。
Plnto
(冥王星)